現場直伝! 躯体工事の100ポイント
内容紹介
今の現場管理者は、少数配員のもと人手不足を凌いでいるのが実情で、品質をじっくりチェックして学習する余裕がないまま現場を終えてしまうことも多い。本書は長年にわたり現場巡回指導を行ってきた著者が、心構えや技術的なポイントを楽しいイラストや図・写真でわかりやすく解説。若手・中堅の施工管理技術者必携の読本。
体 裁 四六・220頁・定価 本体2200円+税
ISBN 978-4-7615-2531-6
発行日 2012/06/01
装 丁 KOTO DESIGN Inc.
はじめに
1 技術者としての心構え
001 人の失敗まで自分の糧にしよう
002 現場が教えてくれること
003 ベテランの生きたノウハウに学ぼう
004 「段取り八分」を実践しよう
005 マニュアルに頼りすぎてはいけない
006 何事も最初が肝心
007 施工要領書は作業計画の原点
008 検査記録と写真は何のため?
009 自分の歩掛りデータを持とう
010 コミュニケーション能力をアップしよう
2 鉄筋工事
011 構造図から何を読み取る?
012 現場での検収を怠らない
013 柱配筋のチェックポイント
014 かぶり厚さが持つ3つの役割
015 最小かぶり厚さ+10mm= 設計かぶり厚さ
016 設計かぶり厚さは目地底から確保しよう
017 かぶり厚さの不具合がなくならないわけ
018 かぶり厚さについてまわる「あき」の確保
019 あき、かぶり厚さが見逃されやすい部位
020 あきの確保が難しい柱脚部
021 配筋検査と写真記録
022 機械式継手の確認事項
023 設備配管にも目を向けよう
024 設備屋さんに設備開口まわりの配筋を任せたら…
One Point スペーサーあれこれ
025 工場製品でも安心は禁物
026 圧接に関する引張試験結果は早めに入手
027 定着長さに関するJASS5改定の要点
028 かぶり厚さに関するJASS5改定の要点
3 コンクリート工事
029 乾燥収縮ひび割れ防止対策の考え方
030 ひび割れ誘発目地とは
031 断面欠損率をアップさせる裏技
032 バルコニースラブの誘発目地位置決めの留意点
033 開口両脇に誘発目地のある場合、斜め補強筋は逆効果
One Point 腰壁の誘発目地間隔は腰壁の高さに応じて
034 「コンクリートが溶けとるんと違うか?」
035 今は昔?集合住宅の「八の字ひび割れ」
036 せき板を取り外しても養生が必要なわけ
037 降雨はお金のかからない外壁の散水試験だ
038 地下外壁からの漏水を防止しよう
039 打放しコンクリートは手直しが効かない
040 打放しコンクリートは手直しが効く?
041 打ち重ねたコンクリートの色が違うのはなぜ?
042 レイタンスは脆弱層だ
043 仮設開口はあくまで仮設だ
044 床開口にまつわる事例
045 生コン調合(配合)報告書・計算書を読む
046 日頃からスランプに慣れておこう
047 テストピースの採り方を間違えないように
048 コンクリートの打継ぎの要点
049 膨張コンクリートといえども収縮する
050 バイブレータの働きを知っておこう
051 降雨時のコンクリート打ちは悩ましい
052 散布塗込み型床コンの泣きどころ
053 土間コンのひび割れを減らそう
054 年々増加している暑中のコンクリート
055 コンクリート強度に関する2009年版JASS5改定の要点
4 鉄骨工事
056 高力ボルトは大臣認定品とJIS製品の2種類ある
057 マーキングのずれ方をよく観察しよう
058 溶接継手を観察してみよう
059 超音波探傷検査の合否判定の見方を知ろう
060 パス間温度の管理とは?
061 鉄骨骨組みの倒壊防止に細心の注意を
062 建ち直しワイヤが不要な建方治具を活用
063 塗装や溶接をしてはいけないところ
064 溶融亜鉛メッキ鉄骨の基礎知識
065 焼抜き栓とスタッド溶接のポイント
One Point アークストライクの禁止
5 型枠工事
066 打放しコンクリートでの留意点
067 ビーム式工法・デッキプレート工法の倒壊に注意
068 トラス筋付デッキ型枠:力の伝達メカニズム
069 急施工向けコンクリート打込み型枠
070 明かりがとれる型枠は省エネにも貢献
071 「あばたもえくぼ」にはならない?
072 構造スリットを歪ませない
073 コンクリート打継ぎ型枠の留意点
074 スラブ下支保工はFc未満でも取り外しできる
075 敷き桟・敷きベニアからノロを漏らさない工夫
One Point コンクリート表面に現れる色もいろいろ
6 土工事・杭工事
076 地盤調査報告書で注目してほしいこと
077 造成地盤の中味は不均質?
078 土中埋設配管はメンテ不能
079 知っておきたいシロアリの基礎知識
080 埋戻しは(増打ち)地中梁天端まで
081 既製杭が入場したらよく観察しよう
082 電流計指示値からわかること
083 既製杭:高止まりがあれば低止まりもある
084 スライム処理の重要性
085 杭頭で気をつけること
7 PCa工事・PC工事
086 プレキャストコンクリート(PCa)いろいろ
087 PC工場調査で見るべきこと
088 PCaカーテンウォール取付けの要点
089 タイル打込みPCa板の留意事項
090 プレストレストコンクリート(PC)とは
091 プレストレス工事に着手するまでにやるべきこと
092 配線工事の要点とグラウト注入
093 緊張管理の進め方①
094 緊張管理の進め方②
8 耐震補強工事
095 図面どおりにいくとは限らない
096 耐震診断・耐震補強とは?
097 あと施工アンカーの各ステップでの要点
098 あと施工アンカーの現場非破壊試験
099 型枠・コンクリート工事の要点
100 グラウト工事の要点
昭和40年代、筆者がまだ現場の若手技術者のころ、建設工事現場の配員構成はピラミッド型であり、諸先輩から現地で現物を見て納まりや施工にあたっての心構えなどを適時教えてもらったり、職人さんにも教えてもらったりして覚えたものだが、今の若手現場技術者は、少数配員のもとで多忙な毎日を凌いでいるので、現地で時間をかけて学ぶとか教えてもらうことが難しい環境になっていると思われる。特に入社間もない若手技術者は、時間的にも精神的にもゆとりがなく、技術的なことはともすれば何だかよくわからないままに現場を終えてしまうことが増えてきているのではなかろうか。
本書は、筆者が長年にわたり従事してきた現場指導の中から、若手現場技術者にもう一歩進んで実践してほしい心構えや、知っておいてほしい基礎知識を、自己流表現ではあるが肩の凝らないよう、できるだけわかりやすく書き留めたものである。そういうこともあり、本書は電車の中でも気軽に手にとって読めるような小型版とし、右ページは左ページの文章を手助けするイラストや写真・図・表を掲載し、文字ばかり読み続ける精神的な負担を少しばかり軽減するよう心がけた。
題材として躯体工事を選んだのは「躯体の品質は建物の中で生活を営む人々の生命・財産への関わりが極めて大きい」と常日頃考えているからである。ところが、若手技術者は内容が多彩な仕上工事に比べると躯体工事は今一歩関心が薄く、(彼らの日頃の多忙さも影響して)ついつい専門工事業者に任せがちとなり、若いうちに身に付けておいてほしい躯体に関する基礎知識や技術への関心が疎遠になりつつあるのではないかという思いを持っている。
「これだけは知っておいてほしい」の内容は全て筆者の知見にもとづいたものであり、置かれた状況によっては適切でない場合があるのはお許し願いたい。また、既往の施工の参考書のようにあらゆる内容が体系立てて網羅されているわけではないので、調べたいものが出ていないという項目は多々あるだろうし、専門書のように奥深く立ち入っていないところも多いのでご容赦願いたい。これからの現場を担う若手の建築系現場技術者に読んでもらって、躯体工事により一層関心を向けていただければ幸いと思っている。
2012年4月
中川 徹