現場で学ぶ 住まいの雨仕舞い
内容紹介
豊富な雨漏り事例で説くトラブルを防ぐ技術
建築主の信頼を最も失うトラブルは、雨漏りである。漏らなくて当り前に拘わらず、実際には大変多い欠陥の一つであるように、雨仕舞いは常に住宅の課題だ。本書は、ベテラン技術者が木造住宅の豊富なトラブル事例をもとに、雨漏りのしにくいデザイン、危険部位における雨の浸入対策等、雨漏りしない家づくりのノウハウを公開。
体 裁 四六・224頁・定価 本体2000円+税
ISBN 978-4-7615-2390-9
発行日 2006-06-30
装 丁 KOTO DESIGN Inc.
序 雨が漏る前に
第Ⅰ章 住宅の雨漏りとは
1 住宅の施工者にとっての「雨漏り」
2 雨漏りによる2次被害─シロアリ
第2章 雨漏りの要因
1 屋根下葺き材と外壁下葺き材
2 左官材料のクラック
3 シーリング工事
4 外壁通気工法
コラム アメリカの究極の豪邸「落水荘」の雨漏り
第3章 雨漏りの事例〈屋根~軒先編〉
1 フラットルーフがプールに
2 屋根からの取合い
3 本体~下屋軒先の取合い
4 水を堰き止める
5 片棟・片流れ
6 パラペット立上げ
7 アスファルトルーフィングのタッカー
8 軒の出のないケラバ
9 トップライトまわり
10 ドーマー・煙突・換気トップ
第4章 雨漏りの事例〈外壁編〉
1 アスファルトフェルト捨て張り
2 外壁サイディングの浮き
3 サッシ・シャッターボックスのコーナー
4 サッシまわり
5 妻換気口
6 換気口・換気レジスターのフィン
7 庇
8 配管の外壁貫通部
9 化粧胴差・化粧軒桁
10 アール屋根・アール壁
第5章 雨漏りの事例〈バルコニー編〉
1 バルコニー手すり壁の笠木
2 バルコニー笠木~本体のCSガード
3 バルコニーサッシ先行・防水後工法
4 バルコニー手すり
5 バルコニー壁際サッシ
コラム 雨漏りのデパート
第6章 雨漏りさせないために
1 散水耐風性能実験
2 〈番外編〉 結露による水漏れ
3 〈まとめ〉 雨漏りさせないために
おわりに、謝辞
私の大学の先輩である㈲荒川技術コンサルタントの荒川治徳氏とは、大学の建築学科関連の会で話をする機会がありました。氏が『建築トラブルにみる常識非常識』(学芸出版社)を出版されたときから、住宅のトラブルについて話をする機会が増え、紹介いただいた日本建築協会の出版委員会の毎月の会議に出席するようになり、今回の出版の機会をつくっていただきました。
私は住宅業界に入って、工事現場・技術系の仕事をするようになってちょうど30年になりますが、人生の一区切りとしてのまとめと、生きた証としての良い記念になりました。
日本建築協会の出版委員会のメンバー各位には毎月の会議において、貴重な助言を頂戴するとともに、励ましていただきました。
図版のスケッチは図面のセンスのない私に代わって、松井芳昭氏に描いていただきました。ガムスター㈱藤井正久氏には下葺き材関連の資料を、㈱マエダの斉藤隆史氏にはシロアリ関連、双和化学産業㈱石飛淳二氏にはFRP防水関連、そして富士川建材工業㈱柳重典氏には左官関連の資料を提供いただきました。
㈱学芸出版社の編集長:吉田隆氏、編集:知念靖広氏・越智和子氏には永らく出版に向けて、いろいろと援助していただき、感謝申し上げます。
このように実に多くの方々からの協力を得ることができました。そして永い時間がかかりましたが、やっと本書が誕生致しました。皆様にこの場を借りて深く感謝し、心よりお礼申し上げます。
有難うございました。
玉水新吾
『防水ジャーナル』((有)新樹社)2006.8
建築主の信頼を最も失うトラブルは、雨漏りである。住宅に関する係争は医療訴訟に次いで多くなっており、その中でも漏水関連の事例が多い。雨漏り箇所の特定は難しく、また完全な手直しも難しい。本書では、ベテラン技術者が木造住宅の豊富なトラブル事例をもとに、雨漏れのしにくいデザイン、危険部位における雨の浸入対策など、雨漏りしない家づくりのノウハウを公開。まず設計段階から雨の漏れない家を考えることを基本とし、危険性の高い場所が含まれる場合の対処法が分かりやすく述べられている。
『建築士』((社)日本建築士会連合会)2006.12
およそ、住まいの設計や施工で、「雨漏り」の現場経験のない人はほとんどいないのではないだろうか。この問題は縄文の時代から今にも続く大命題(チョット大袈裟?)だ。先ずは、漏っちゃあしょうがないのだ。
先輩達は、この対策にいろいろ手を尽くしノウハウを伝えてきたが、材料や技術が進歩した反面、単純なことが忘れられた。雨がかりの防水は『シーリングだけ』というディテールがその証拠である。
この本は、水は上から下に流れるという、とてもプリミティブなことを再々強調してやまない。そして毛細血管現象との二つの大きな特性を踏まえ、どうしたら雨漏り被害のない家になるか懇切丁寧に、現場例や図解も交えながら教えてくれる。
その中で「ハッ」とする部分がある。それは、外壁や屋根の表面材を第1次防水とすると、その下地のフェルトやルーフィングが、第2次防水としてかなり重要な役目を果たしているということである。これにはベテラン諸氏でも『目から鱗』ではないだろうか。
一般にこれら下地貼り工事の精査はしていないのが現実である。ましてサッシ周りや、換気扇周りのシートの貼り方や欠損の手当てなどにはほとんど無頓着だったような気がする。
あるいは重ね代が逆さまになっていても、何となく見過ごしてはいなかっただろうか。
筆者の玉水新吾氏は、職人ではない。住宅会社での技術一筋の人である。しかし現場と理論を一如に洞察し体系的にまとめ『古くて新しい問題』を諄諄と解き明かしている。ベテラン、駆け出しを問わず、ぜひとも読んで頂きたい指南書である。
(勝部民男)