外国人との建設現場コミュニケーション術
内容紹介
理解と育成のヒント満載。多言語用語集付き!
これからの建設業に必須の外国人材。しかし意思疎通や生活習慣の違い、不法就労や失踪の問題など、外国人の雇用や協働にハードルを感じている現場も多い。ますます増えていく外国人材とトラブルなく働き、彼らを育て、成果を上げてもらうためのコミュニケーション術を身につけよう。6か国語による建設専門用語集も収録!
体 裁 A5・236頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-1371-9
発行日 2020/09/05
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史・萩野克美
はじめに
Chapter1 建設業が外国人を受け入れる背景
1 建設業の現状と課題
2 建設業における外国人受入制度
3 外国人材を確保できない建設会社は生き残れない
4 多様性を受け入れる覚悟を持て
[Column 1]日本の土木技術で、発展途上国の発展に役立ちたい──中部土木株式会社
Chapter2 外国人の生活習慣・価値観を理解する
1 生活習慣・価値観を知る
2 宗教的考え方を知る
3 日本人の特性や慣習を伝える
4 多様性への配慮
[Column 2]「選ぶ」のではなく「選ばれる」立場であると自覚しよう──三州土木株式会社
Chapter3 外国人のモチベーションを高めるには
1 生存安楽の欲求──待遇良く働きたい
2 安全秩序の欲求──安全に、安心して、安定して働きたい
ヒアリングシートの例/個人カルテの例/ESアンケートの例
3 集団帰属の欲求──仲良く働きたい
4 自我地位の欲求──認められて働きたい
5 自己実現の欲求──成長して働きたい
[Column 3]帰国後の将来をしっかり考えてあげよう──橋梁技建株式会社
Chapter4 外国人とのコミュニケーション技術
1 アプローチ:親密力
2 リサーチ:調査力(ヒアリング力、コーチング力)
3 ライティング:文章力
4 プレゼンテーション:表現力
5 クロージング:交渉力
[Column 4]技能実習生として働いたあと、現地法人で活躍してほしい──矢野建設株式会社
Chapter5 不法就労、事故、失踪・・・ 問題が起こる前に
1 「リスクマネジメント」と「危機管理」
2 ハザード、リスクから損失に至るメカニズム
3 ハザードを把握する
4 事例から見るリスクの予防と緩和
付録
1 8か国語 筆談集
2 建設業に関連する在留資格一覧表
3 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が努めるべきこと
4 建設技能者 必要能力一覧表(共通編/型枠/鉄筋)(案)
5-1 施工管理技術者 必要能力一覧表
5-2 施工管理技術者 必要能力一覧表(新入社員5年育成計画)
5-3 個人別キャリアプラン
6 6か国語 建設専門用語集・索引
建設業界は変革の時を迎えている。ICTの活用、働き方改革など、これまでの常識だけでは事業運営できない時代となった。中でも人手不足の背景を受けて、ダイバーシティ(多様性)の名のもとに、多様な人材を積極的に活用しようという考え方が進んでいる。男性社会であった建設業界にて、女性、障がい者、そして外国人と共存しながら、工事を進めていく必要性がますます高まっている。
このような状況の中、日本の建設会社で働く外国人技能実習生や外国人技術者が増加している。まさに鎖国状態だった江戸時代から、開国した明治時代になったようなものだ。その一方、外国人と日本人との価値観の違いや、コミュニケーションの難しさに直面し、うまく外国人の能力を活かし切れていない建設会社が多い。どのような方法で外国人とのコミュニケーションを促進し、お互いがわかりあい、相互理解を進めていけばよいのか、悩んでいる人も多いことだろう。
本書は、外国人と日本人との「コミュニケーション」に着目し、スムーズに人間関係を構築するための手法を具体的に解説することを目的として執筆した。
まずChapter1で、建設業が外国人を受け入れる背景を、建設業界の現状、外国人受入制度をもとに解説する。さらには、技能実習、特定技能、技能、そして技術者に分けて、どのようにして採用すればよいのかを記載した。
Chapter2では、外国人特有の生活習慣、価値観、宗教観を理解することの重要性、さらには日本人独特の特性や慣習をきちんと伝えることの重要性を解説する。
Chapter3では、外国人のモチベーションを高めるための方法を、マズローの欲求5段階説をもとに解説する。マズローの欲求5段階説とは心理学者A. マズローが提唱する「人間の動機づけに関する理論」をもとに、人間の持つ欲求を5つに階層化しているものだ。外国人が建設業にてやる気を持って働くための、組織の制度改革、風土改革の手法を活用してほしい。
Chapter4では、外国人とのコミュニケーション術を、①親密力(アプローチ)、②調査力(リサーチ)、③文章力(ライティング)、④表現力(プレゼンテーション)、⑤交渉力(クロージング)の5つの段階に分けて解説する。①親密力(アプローチ)とは相手との距離を縮める方法、②調査力(リサーチ)とは相手の話をきちんと聞き取る方法、③文章力(ライティング)とは文章によるコミュニケーション技術、④表現力(プレゼンテーション)とは相手に口頭でわかりやすく伝える技術、⑤交渉力(クロージング)とは相手のノーをイエスに変える方法──である。それぞれの段階で、外国人とうまくコミュニケーションを取るための手法を具体的に解説している。
Chapter5では、不法就労、事故、失踪などの問題が起きないようにするための予防措置と、万が一問題が起きてしまった後の緩和措置について解説する。実際に発生した具体的な事例をもとに説明しているので、問題解決の参考となるだろう。
巻末には、付録として、日本語を十分に理解できない外国人とのやりとりを促進するための「8か国語 筆談集」や、「建設業に関連する在留資格一覧表」「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が務めるべきこと」を添付した。さらに外国人技能者、技術者育成に役立つ「必要能力一覧表」「キャリアプラン」を教育計画立案に活用してほしい。
さらに、6か国語による「建設専門用語集」を付録とした。これは日本人でも難しい建設専門用語を6か国語に翻訳したもので、写真、イラスト付きなので、日本で働く外国人が日本の建設現場で早期に慣れ、活躍するための助けになるだろう。
外国人とのコミュニケーション術を身につけることで、外国人がやる気、やりがいを持って働くことのできる建設業界をつくることができるだろう。日本人と外国人が共存する工事現場をつくることで「働き方改革」が進み、業界全体が活気であふれることを望んでいる。
本書が今後の建設会社運営、さらには建設業界繁栄の一助になれば幸いである。
ハタ コンサルタント株式会社
代表取締役 降籏達生
本書(第1版第1刷)に以下の誤りがございました。読者の皆様にお詫び申し上げますとともに、以下に訂正いたします。(2020.12.25)