雨漏り修理のプロが教える 屋根・外壁のメンテナンス

雨漏り110番グループ 編著
唐鎌謙二・藤田裕二・原田芳一・倉方康幸 著

内容紹介

多数の生の事例と現場写真でやさしく解説

住宅の補修実績を多数有する日本最大の雨漏り職人集団「雨漏り110番」が、外壁・屋根を中心とした住宅メンテナンスについて、悪質業者に騙されず、お得に工事を発注するために必要な知識を、同業者からの反発も恐れず大公開!多数の生の事例と現場写真でやさしく解説する日本初、ユーザーのための住宅メンテナンス教科書。

体 裁 A5・176頁・定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-7615-1370-2
発行日 2020/08/01
装 丁 中川未子(よろずでざいん)


目次著者紹介はじめにおわりに
はじめに

第1章 失敗しない住宅メンテナンスの心得

1 得する工事と損する工事

メンテナンスで後悔する人たちの共通点~慌てる人、急ぐ人ほど損をする~
長期的に見てその補修は得ですか?
建物の寿命を延ばす工事、寿命を縮める工事
「10年過ぎたら外壁塗装しないと建物が傷みますよ」のウソ
誰も言わない大規模修繕工事の真実
メンテナンスもやり過ぎれば害になる

2 悪徳業者の見分け方

リフォーム業界のウラ事情~職人の腕は落ちている?~
建物診断や雨漏り調査を無料でやる業者には要注意!
「足場代無料」のカラクリ
「大幅値引き」のカラクリ
不安をあおる業者は100%無視して良い
悪徳業者をあぶり出す魔法の言葉
「3件分の報告書を見せてもらえますか?」

3 施主の心得

建物メンテナンスで後悔しないための三つのポイント
工事代金の支払いにおける三つの注意点
リフォーム工事の品質を下げずに値段を下げてもらう三つの交渉方法
工事のミスや不具合に気づいた時の三つの対応方針

第2章 住宅メンテナンスの基礎知識

1 屋根の種類

①瓦屋根
②金属屋根
③アスファルトシングル葺き
④陸屋根

2 外壁の種類

①サイディング外壁木造
②モルタル外壁木造
③タイル張り外壁木造
④漆喰木造
⑤ALCパネルS造
⑥押出成形セメント板S造
⑦ラスシート外壁・リブラス外壁S造
⑧コンクリート打ち放し外壁RC造
⑨RC造の塗装仕上げ外壁RC造
⑩RC造のタイル外壁RC造
⑪パネル外壁S造・RC造
⑫石張り外壁S造・RC造

3 メンテナンスのポイント

①屋根の葺き替え
②屋根の塗り替え
③屋上防水
④木造の外壁塗り替え
⑤S造・RC造の外壁塗り替えS造・RC造
⑥サイディング外壁木造
⑦タイル張り外壁S造・RC造
⑧モルタル外壁S造
⑨コンクリート打ち放しRC造
⑩パネル外壁共通
⑪石張り外壁共通
⑫シーリング材共通
⑬ベランダ・バルコニー防水共通
⑭木部の腐朽木造
⑮鉄部の錆、腐食共通
⑯アルミ部材共通
⑰雨樋(竪樋・軒樋)共通
⑱板金部材(水切り、棟包、唐草他)共通
⑲シロアリ木造

第3章 住宅メンテナンス失敗事例と解決策

1 木造編

Case1 スレート屋根を塗り替えたら雨漏りが起きてしまった
Case2 飛び込みセールスの言うままに瓦屋根の補強をしたら家中が雨漏り
Case3 カバー工法で屋根を葺いたら大雨のたびに雨漏りするようになった
Case4 窓の隙間をシーリングで塞いだら雨漏りが悪化してしまった

2 鉄骨造(S造)・鉄筋コンクリート造(RC造)編

Case1 屋上防水工事をしたら屋上がプール状態に
Case2 屋上防水工事をしたら、あちこちで膨れが発生した
Case3 ベランダ防水工事をしたら、かえって雨漏りが発生してしまった
Case4 塗装業者からメンテナンスフリーと勧められてALC外壁に石材調塗装を施工したら逆にメンテナンスムリー(無理)になってしまった
Case5 外壁工事の際、斜壁のタイルを既存のまま残したら雨漏りが発生
Case6 今まで雨漏りしていなかったのに、屋上防水工事をしたら雨漏りした
おわりに

編著者

雨漏り110番グループ

2005年に設立された日本最大の雨漏り職人ネットワーク。難しい雨漏りを解決し続ける雨漏りのプロフェッショナル集団。全加盟店に雨漏りの専門家である「雨漏り診断士」(NPO法人雨漏り診断士協会認定)が在籍。監修書籍に『図解 雨漏り事件簿 原因調査と対策のポイント』(学芸出版社)。

著者

唐鎌謙二

雨漏り110番グループ代表、日本建新株式会社代表取締役、日本外装株式会社代表取締役、日本外装システム株式会社代表取締役、一般社団法人雨漏り保証協会理事長。著書:『自分を磨く「嫌われ仕事」の法則』(単著、経済界)、『図解 雨漏り事件簿 原因調査と対策のポイント』(共著、学芸出版社)。

藤田裕二

株式会社建水プロテクト代表取締役、株式会社建水代表取締役、一般社団法人雨漏り保証協会理事、二級建築士、1級建築施工管理技士、既存住宅状況調査技術者。『図解 雨漏り事件簿 原因調査と対策のポイント』(学芸出版社)雨漏り事例提供。

原田芳一

株式会社リペイント湘南代表取締役、日本建新株式会社取締役、一般社団法人雨漏り保証協会専務理事、NPO法人雨漏り診断士協会理事、ペイント&コーティングジャーナル紙「雨仕舞から塗装を考える」連載、『図解 雨漏り事件簿 原因調査と対策のポイント』(学芸出版社)雨漏り事例提供。

倉方康幸

有限会社サンカラー代表取締役、NPO法人雨漏り診断士協会理事、東京都塗装工業協同組合認定塗装診断士、A・F・T色彩検定2級、『図解 雨漏り事件簿 原因調査と対策のポイント』(学芸出版社)雨漏り事例提供。

屋根・外壁のメンテナンスが家の寿命を決める

不動産登記法において「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない」と定義されています。屋根と壁を有することが建物の前提条件であり、屋根と外壁こそが建物を建物たらしめていると言っても過言ではありません。そもそも建物に求められる最も基本的かつ根源的な機能は「雨」と「風」を凌ぐことです。人類は雨と風から身を守るために建物を造る術を身につけ、それを発展させてきたのです。

そして、雨と風を最前線で受け止め、建物を外部から守ってくれているのが屋根と外壁です。つまり、大切な建物を長持ちさせるためには、屋根と外壁のメンテナンスこそが最も重要と言えるのです。屋根や外壁のメンテナンスを疎かにすれば、大切な建物の寿命を縮めかねません。

また、屋根や外壁のメンテナンスには一般的に高額な工事費用がかかります。失敗したからと言って簡単にやり直すことはできません。数百万円の工事費用をドブに捨てるような残念な失敗をし、後悔するひとがあとを断ちません。屋根や外壁のメンテナンスは失敗してからでは遅いのです。

私たち雨漏り110 番グループでは、2018 年1 月に『雨漏り事件簿 原因調査と対策のポイント』(学芸出版社)を上梓しました。

本来であれば企業秘密である大切なノウハウや貴重な事例を数多く公開しました。そこまでして出版した最大の目的は、「雨漏りで困っている人を一人でも多く救いたい」という思いでした。雨漏りで困っている全ての人を私たち雨漏り110 番グループが一手に引き受けることができればそれに越したことはありません。しかし現実には私たちにそこまでの対応力はありません。であるならば、私たちの経験やノウハウを公開することで、雨漏りのことを真剣に学びたいと考えている真面目な工事業者さんのレベルが上がり、結果として雨漏りで困っている人を救えるのではないかと考えました。また、雨漏りで困っているエンドユーザー自身が、我々の本を読み、雨漏りに関する知識を身につけることで、レベルの低い業者や悪徳業者に騙される事態を防げるのではないか?とも考えました。そのような想いから、私たち雨漏り110 番グループで共有する大切なノウハウや貴重な事例を思い切って公開したのです。

出版から2 年が経ちました。数多くの雨漏り事例が掲載され、その原因調査と対策までを詳細に解説した類書が他に存在しなかったことから、建設業界においてたいへん高い評価をいただいております。また、本を読んだというエンドユーザーの方からも多数の反響をいただいており、「雨漏りで困っている人を一人でも多く救いたい」という当初の目的は、一定レベルまでは果たせたのではないかと自負しております。

しかし、エンドユーザーからの反響の中には「素人には読みづらい」という声や「もう少しわかりやすいと助かる」という声が少なからずあったのも事実です。できるだけわかりやすい文章で書いたつもりですが、読み返してみると、専門用語が多めなのは確かです。多少なりとも建築の知識がある人間ならともかく、一般の皆様にとっては敷居が高い内容になっていることは否めません。また、完全に雨漏りに特化した本なので、対象となる読者は実際に雨漏りで困っている人だけとなってしまっています。そもそも出版の目的が「雨漏りで困っている人を一人でも多く救いたい」だったのですから、対象読者が雨漏りで困っている人だけになることは当然だと思われるかもしれません。しかし、実はそうとも言えないのです。

私たち雨漏りの専門家からすれば、雨漏りが発生してから対応するより、雨漏りが発生しないよう事前に予防するほうが簡単で確実なのです。

もちろん予防が難しいタイプの雨漏りもありますので、全ての雨漏りを予防できるわけではありません。しかし、ちょっとした工夫で予防できる雨漏りは意外と少なくないのです。例えば住まいの屋根や外壁の塗り替え工事の時、あるいはマンションの大規模修繕工事の時など、標準的な仕様に少し工夫するだけ、ちょっと手を加えるだけで、雨漏りのリスクを大きく低減することができるのです。
ところが、書店やネット書店を見回してみると、そのようなリスク回避の工夫を教えてくれる本が全くありません。一般の住宅所有者やビル・マンション所有者に、建物メンテナンスのノウハウや有益な情報を教えてくれる実用書やノウハウ書が全く存在しないのです。

そのようなことから、このたび「雨漏りをはじめとして、住宅の補修実績を多数有する雨漏り110 番グループが、外壁・屋根を中心とした住宅メンテナンスについて、施主として知っておけば、悪質業者に騙されず、お得なリフォームができるレベルの知識(考え方+技術知識)を紹介する」ことをコンセプトとして本書を出版することになりました。

建物メンテナンスのプロである私たち雨漏り110 番グループが、お客様の立場にたって「もし自分自身の家をメンテナンスするとしたら」、あるいは「自分の大切な恩師に住宅メンテナンスのことをアドバイスするとしたら」という視点で書き上げた本です。

同業者からの批判や反発を恐れずに、建設・リフォーム業界の実態や裏事情も全て率直に書きました。

私たち自身が「プロフェッショナルとして目指すべき理想の住宅メンテナンス」を思い描きながら書きました。

実際の現場で目撃した様々なメンテナンスの失敗事例についても、他山の石として、同じ失敗をしないように自戒の念を込めて書きました。

建築について全く知らない一般の方が読んでもわかるように、専門用語をできるだけ噛み砕いて、わかりやすい言葉で書いたつもりです。

ちょうど住宅のメンテナンスをご検討中の方、また、将来的なメンテナンスのために知識を備えておきたい方、あるいは今現在既に進行中の工事内容に不安や不信感を感じている方、そのような皆様のお役に立てる内容になっていると自負しております。

本書の着想を得たのは2018年2月14日でした。前著『雨漏り事件簿 原因調査と対策のポイント』の編集者である岩崎健一郎氏とのディスカッションにおいて基本的なコンセプトが生まれました。一緒に京都駅に向かって歩きながら、「自分が持っている経験や知識を活かして、もっと世の中に貢献する本を書けないだろうか」と話し合う中で、我々のような建物のプロにとっては常識でも、一般的にはあまり知られていない「建物を長持ちさせるノウハウや対処方法」があることに気づきました。そして、そのノウハウや対処方法を、一般のエンドユーザーにわかりやすく伝えることの意義は大きいのではないかと思い至ったのです。

広い意味での建物メンテナンスに関する類書は、過去にも数多く出版されています。しかし、建物の寿命に大きく影響する「屋根・外壁メンテナンス」の重要性や、そのポイントについて、一般エンドユーザー向けにわかりやすく書かれた本を書店で目にしたことがありません。でも、そのような本を必要としている人は決して少なくないはずです。

そこから本書の企画作りが始まりました。何度も試行錯誤を繰り返し、少しずつ方向性が定まり、1年ほどかけてようやく基本的なコンセプトがまとまりました。そのコンセプトがそのまま本書の書名となったのです。「雨漏りのプロが教える 屋根・外壁のメンテナンス」という書名の通り、雨漏りのプロだからこそ語れる「屋根・外壁メンテナンスの重要性」があります。雨漏りのプロだからこそ語れる「屋根・外壁メンテナンスで失敗しないための心構え、ポイントや対処方法など」のノウハウもあります。

そのようなプロとしての実務から得た知識や経験を、一般エンドユーザーにわかりやすく伝えることに重きを置きました。住宅のメンテナンスをご検討中の方、将来的なメンテナンスのために知識を備えておきたい方、あるいは今現在既に進行中の工事内容に不安や不信感を感じている方、そのような皆様のお役に立てる内容になっていると自負しています。本書をお読みいただくことで、屋根・外壁のメンテナンスでの失敗を防ぐことができるはずです。皆様が、良い工事業者さんを選び、より良いメンテナンスを実現し、皆様の大切な建物が長持ちすることを心より願っております。

本書の執筆においては、前著『雨漏り事件簿 原因調査と対策のポイント』と同様に、雨漏り110 番グループの仲間に力を借りることにしました。私(唐鎌謙二)を含む4人の共著となっています。「本当に世の中に貢献する本を作りたい」「たくさんの人に役立つ本にしたい」そのように考えた時、自分一人だけで頑張るのではなく、信頼できる仲間たちの力を結集するのは当然の判断でした。こうして全てを書き終えた今、正しい判断だったと確信しています。

日々の業務に追われながらも、最後まで粘り強く執筆してくれた共著者の3人(藤田裕二氏、原田芳一氏、倉方康幸氏)には、本当に頭が下がる思いです。この場を借りて心からの感謝を伝えたいです。自分の仕切りの悪さによってたびたび迷惑をかけてしまったことをお詫びします。

前著に引き続き担当して頂いた学芸出版社編集部の岩崎健一郎氏には、本書においても多くの助言と提案をいただきました。計画通り執筆が進まずご迷惑をおかけしましたが、氏の絶妙な伴走のおかげで、ようやく本書が誕生いたしました。この場を借りて深く感謝申し上げます。

前著に続いて本書を出版することで、自分自身の実務上の経験や知識を世の中に還元することができます。出版を通じて多少なりとも世の中に貢献できることに心から喜びを感じています。このような機会が得られるのも全て雨漏り110 番グループの仲間たちのおかげです。

最後になりますが、私が心から信頼し、本当に大好きな雨漏り110 番グループの仲間たち、今この瞬間も全国で活躍している雨漏りハンターたちに心から感謝します。ありがとうございます。