地域おこし協力隊

椎川 忍・小田切徳美・平井太郎・地域活性化センター・移住・交流推進機構 編著/総務省 協力

内容紹介

制度開始から6年。いま全国444の自治体で1500人以上の地域おこし協力隊員が活動中だ。隊員の成長、地域住民の変化、自治体職員の進化をおこす成功のポイントを、現役&OB隊員、自治体職員など70名が執筆。なぜ若者たちは地域おこしの仕事に向かうのか、彼らは地域の状況を変えられたのか、実践者たちのリアルな現場報告。

体 裁 四六・288頁・定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-7615-1352-8
発行日 2015/09/01
装 丁 上野かおる


目次著者紹介はじめにおわりに書評紙面イメージ

はじめに 椎川忍

第1章 地域おこし協力隊とは

・地域おこし協力隊制度はこうして生まれた 椎川忍
・多様な若者と多様な農山漁村をつなぐ地域おこし協力隊 小田切徳美
・コラム 地域起点でイノベーションの風をおこせ! 武居丈二

第2章 地域をおこす60人の仕事

〈協力隊員OB〉

  • どうしていいかわからないからこそ、地域おこしの仕事は、いま僕たちの前にある 山形県朝日町 佐藤恒平
  • 一点突破から地域に波及 岡山県美作市 水柿大地
  • 地域おこし協力隊を成功させるポイント 新潟県十日町市 多田朋孔
  • 地域おこしとは人を元気にすること 愛媛県伊予市 冨田敏
  • 昔ながらの暮らしにこそ宿る生きがい 秋田県上小阿仁村 水原聡一郎
  • 教育で地域の未来は変えられる 島根県海士町 奥田麻依子
  • 商店街で鍛えられタウンマネージャーに 沖縄県沖縄市 広瀬陽
  • 都会と島をつないで新しい価値観を発信するビジネス 香川県小豆島町 眞鍋邦大
  • 若い世帯が移住したいと思えるふるさとに 鹿児島県西之表市 遠藤裕未
  • 競争と連携から生まれる七つの島の島おこし 佐賀県唐津市 小峰朋子
  • あっぱれ!天龍村ありが隊 長野県天龍村 内藤有香
  • わたしの、女子から始める農業改革 山形県村山市 原田有佳子
  • 地域おこしのプレイヤーから、サポーターへ 島根県飯南町 岸本佳美
  • 地域の体力を考えた、地域づくり 山口県周南市 大友翔太
  • 自分の集落の温度を上げる 北海道喜茂別町 工藤大文
  • 地域という現場を体験できる観光を 愛媛県今治市 鍋島悠弥
  • 大学のフィールドワークから始まった、人をつなげる活動 茨城県常陸太田市 白石百合乃
  • 自分しかできない役割を発揮する若者のネットワークをつくる 広島県三次市 野口拓郎
  • 地域おこし協力隊で見つけた自分の生き方 秋田県湯沢市 川邉絢一郎

〈現役協力隊員〉

  • 林業のシロウト、起業を志す 高知県本山町 川端俊雄
  • みんなでつくろう地域おこし結婚式 岡山県高梁市 佐藤拓也
  • イノシシ・シカを楽しく活用して地域を活性化 長崎県対馬市 谷川ももこ
  • 村で若者の仕事をつくる 奈良県川上村 村上航
  • 女性、若者、子ども目線で地域を元気に 佐賀県江北町 村元奈津
  • アートを媒体にして、人と人の出会いをつくる 徳島県三好市 合田幸代
  • 人と人との縁が地域を動かす 愛知県東栄町 大岡千紘
  • シティ派協力隊という生き方 山梨県富士吉田市 齋藤萌
  • 他人任せから自分ゴトへ、まちの人々の意識を変える 静岡県松崎町 野口智弘
  • そばづくりを通じて、人と人とがつながりだした 栃木県日光市 土屋小枝
  • 木こり見習いの「協力され隊」 石川県七尾市 外山泰典
  • 自分の意思を伝えれば、地域の人々は応えてくれる 青森県南部町 岩城美果
  • 人々が自由でいられる場をつくる 三重県尾鷲市 豊田宙也
  • 伝統織物を次世代につなぐ 埼玉県秩父市 佐俣菜津子
  • 地域おこし協力隊に求められる三つの資質 新潟県十日町市 西山仁
  • NPOと連携して農業の可能性を開く 山梨県北杜市 西園繁
  • お金では買えない、まちの値打ちの磨き方 鳥取県倉吉市 西河葉子
  • 地元の人が地元を好きになる情報発信 滋賀県湖南市 黄瀬絢加
  • 600年受け継がれてきた銘茶で、地域に風穴を! 滋賀県東近江市 山形蓮
  • 自給自立的な地域づくりの夢を協力隊で叶える 広島県神石高原町 小埜洋平
  • エコツアーの企画で地域の価値を再発見 静岡県南伊豆町 田中洋介
  • 農業以外で農村を支える仕事 岩手県一関市 佐藤佑樹
  • 営業力でゼロから事業をつくりあげる 愛媛県西予市 松本仁紀
  • 隊員×行政×地域のチーム力の高め方 岡山県真庭市 海野文雄
  • 現代に続けられる伝統工芸を探る 長野県麻績村 田中祥子
  • 地元を愛する女子のチカラが地域を変える 高知県須崎市 上野伊代
  • 米の生産者の想いを届けるブランド化 愛媛県宇和島市 野内隆行
  • 高齢者の生活に寄り添うお惣菜屋さんをつくる 兵庫県朝来市 加藤貴之
  • 四季を感じながら、農業を営みたい 島根県邑南町 鵜瀬頼秀
  • 古民家を改修して、ゲストと住民の交流拠点づくり 山形県川西町 江本一宏
  • ヨソモノ+地元目線でふるさとの魅力を発信する 山形県遊佐町 後藤真樹

〈行政職員〉

  • 協力隊に気づかされた地域のミッション 長崎県対馬市 梅野加寿人
  • 人生をかけて挑戦する協力隊を全力でサポート 福岡県うきは市 吉弘拓生
  • 南の小さな国に嵐を呼ぶ女子 熊本県南小国町 橋本哲典
  • 九つのミッションを遂行する協力隊を大量採用 大分県竹田市 志賀郁夫
  • 地域にないスキルで町をPRする協力隊 北海道上士幌町 老月隼士
  • 独自の事業で地域づくりから定住へ! 岐阜県恵那市 佐々木和美
  • 新しい風として、人をつなぐ、資源を活かす 山形県米沢市 相田隆行
  • 国生みの島で島民と観光客をつなぐ島おこし 兵庫県南あわじ市 秦伸行
  • 隊員をサポートし、集落を支える原動力に 新潟県小千谷市 山村綾乃
  • 地域おこしから定住へ、緩やかにシフトする 宮崎県小林市 松元公孝
  • 支援員のネットワークが集落全体を盛り上げる 福島県伊達市 中村謙太郎

第3章 協力隊・地域・自治体の上手な関係のつくり方

  • 協力隊・地域・自治体のチームワークのつくり方 平井太郎
  • 兵庫県朝来市の協力隊の受け入れ体制 馬袋真紀
  • 行政・住民と連携する、岡山県真庭市の協力隊のチーム力 松尾敏正
  • 市町の協力隊事業を支える、愛媛県の取り組み 前神有里
  • 震災復興から始まった、地域への人的支援 稲垣文彦
  • コラム 消防団に加入してみませんか 消防庁国民保護・防災部地域防災室

第4章 役立つ情報を手に入れよう

  • 地域おこし協力隊に関するQ&A 隊員向け/自治体向け
  • 自治体と協力隊志望者をマッチングさせる、移住・交流推進機構(JOIN)
  • 支援者の情報共有の場をつくる、地域サポート人ネットワーク全国協議会
  • 地域おこし協力隊の公募に向けたチェックリスト
  • 地域おこし協力隊の導入後の運用に関するチェックリスト
おわりに 佐藤啓太郎

編著者

椎川忍/地域活性化センター理事長、元総務省地域力創造審議官
1953年生まれ。東京大学法学部卒業。1976年自治省に入省、地方勤務を経て総務省で自治大学校長、初代地域力創造審議官、自治財政局長など歴任。2014年から地域活性化センター理事長。移住・交流推進機構業務執行理事。
小田切徳美/明治大学農学部教授
1959年生まれ。東京大学大学院修了。東京大学助教授などを経て、2006年より明治大学農学部教授。専門は農村政策論、地域ガバナンス論。日本学術会議会員、ふるさとづくり有識者会議座長など兼任。
平井太郎/弘前大学大学院地域社会研究科准教授
1976年神奈川県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2012年より現職。専門は社会学(地域における合意形成)。総務省地域力創造アドバイザー、協力隊全国研修会の講師などを務める。
一般財団法人地域活性化センター
一般社団法人移住・交流推進機構(JOIN)

このたび、小田切徳美先生、平井太郎先生、総務省地域力創造グループをはじめ地域おこし協力隊を育んでくださった多くの方々のご協力のもと、協力隊メンバー、自治体職員、関係機関の方々にご執筆をいただき、本書を刊行することができました。このことは、制度創設者として誠に感慨深いものがあります。

2009年度の制度創設時には、市町村や地域の皆さん、協力隊を志す皆さん方になかなか制度の詳細や財源措置の方法が理解されずに苦労した記憶がありますが、今では知らない市町村はないというまでになりました。また、地方創生の一環として、安倍総理から3000人目標という指示も出していただき、これからの制度の発展とそれに伴って変わっていく地域を見るのが本当に楽しみな状況になって参りました。さらに、協力隊としての任務修了後、地域に定住して起業したり、地域づくりの実践活動に携わって地域をリードする方も大勢出てきました。

こういった動きは、その前年に過疎対策として集落支援員制度が創設されていたこと、NPO法人地球緑化センターが15年間にわたり「緑のふるさと協力隊」を実践されていたこと、また農林水産省の「田舎で働き隊」が補正予算によって創設されていたこと、さらに国際協力事業団の海外青年協力隊の帰国者たちが地方で起業したり産業おこしに携わっていたことなどが大いに参考になりました。

その後、小田切先生が2011年度にイギリスのニューカッスル大学に行かれ、イギリスでは当たり前になっている社会的に成功した人材の地方回帰とそれに伴う「ネオ内発的発展」について、日本ではまだまだ例が少なく、政府として政策的に地方における外部人材の活用を促進することが必要だという指摘をされました。それに基づき、地域おこし協力隊のみならず地域力創造アドバイザー、域学連携、地域おこし企業人派遣など多くの試みがなされ、いずれも地域にとっては大変心強い制度であり、多くの成果も出てきています。

さて、地域おこし協力隊の話に戻れば、数が増えるにつれて成功例をもてはやすばかりではなく、失敗例もあることをしっかりと認識し、そこから学ぶという姿勢も必要になると考えています。経営学でも、成功例に共通要素は少なく、すべてに個別の事情、特殊事情があるが、失敗例には一定の共通性があり、そこから失敗しないコツを学ぶべきだといわれています。

これから先、地域おこし協力隊が当初の期待通り順調に成果をあげ続けていくためには、受け入れ自治体、担当する職員、受け入れ地域の皆さん、そして協力隊志願者の皆さん、それぞれが心して取り組んでいかなければならないことが多いように思います。また、制度を運用する総務省地域力創造グループにおいては、今後さらにこの制度が大きく飛躍していけるよう制度改善に努めていただく必要があると考えます。今回の出版が、それぞれの皆さんにその一端を理解していただく一助となればと強く願う次第です。

地域活性化センター理事長(元総務省地域力創造審議官) 椎川 忍

2015年3月8日、六本木ヒルズが大変な熱気に包まれた。300名を超える地域おこし協力隊員をはじめ総勢700人の地域おこしに燃える人たちが全国から集結した。日本を地域から元気にする「地域おこし協力隊」の創設から5年余り。初のビッグイベント「地域おこし協力隊全国サミット」。

オープニングスピーチは高市早苗総務大臣。「都市から地方へ人が流れ、若い方の感性で地域が元気になっていく。そんな地域が全国にできていけば、日本が変わると思いませんか? そのきっかけをつくるのが地域おこし協力隊。総務省の自慢のプロジェクトです」と、協力隊の今後の活躍に期待を寄せた。

このサミットでは、全国の地域おこし協力隊員による15秒PRや、隊員が開発に携わった産品の物産展や地域のPRを行う「地域おこし協力隊フェア」も実施され、3000人を超える来訪者で賑わった。

地域おこし協力隊がここまで注目を浴びたのは次の安倍総理の発言が大きい。総理が2014年6月の鳥取県・島根県視察時に協力隊員と意見交換を行い、「地域おこし協力隊の若い皆さん、彼らが本当に地域で知恵を出して、汗を流して、地域の皆さんと一緒になって地域の活性化に大きな役割を果たしている。地域おこし協力隊員を、3年間で今の1000人から3000人にすることを総務大臣に指示する」と述べたのだ。

総務省はそのために支援策の充実を急いだ。隊員の起業に要する経費への100万円の特別交付税措置の創設、そして国の予算にも地域おこし協力隊関係予算を初めて計上した。制度説明会、初任者から起業・事業化まで隊員のステージに対応した研修、起業支援のモデル事業なども行っている。また、課題になっている受け入れ自治体や地域のサポート体制の整備のためのモデル事業の実施も盛り込んだ。

全国で活躍する地域おこし協力隊員は、2014年度1500人を超えた。しかし、受け入れ自治体数は444。受け入れた場合に特別交付税措置の適用がある市町村数(1382)の3割強に過ぎない。残る7割近くの市町村は受け入れていないが、次の点をご理解いただき、ぜひとも受け入れを検討していただきたい(詳細は総務省ホームページ「特別交付税措置に係る地域要件確認表」を参照)。

  • 三大都市圏外の市町村は、すべての市町村が特別交付税措置の対象となる(隊員の転出地に一定の要件あり)。つまり条件不利地域でなくても活用できる。
  • 三大都市圏内の市町村であっても、条件不利地域を有している市町村は特別交付税措置の対象となる(隊員の転出地に一定の要件あり)。

地方創生の切り札とも言われ、意欲と能力あふれる若者の力で各地で成果をあげている「地域おこし協力隊」に今こそ取り組むべきと考える。一方、協力隊の受け入れにあたっては、自治体の首長、職員さらには地域の住民にも相当の努力、協力が求められる。自治体、地域の皆さんも一歩前に踏み出して協力隊員と共に地域おこしに取り組めるよう、総務省としてもしっかり支援していきたい。

最後に、地域おこし協力隊を志望している方々、受け入れを検討している自治体・地域の皆様、「地域おこし協力隊」の力で日本の未来を開きましょう。

前総務省地域自立応援課長 佐藤 啓太郎

読売新聞に書評が掲載されました

評・渡辺一史氏(ノンフィクションライター)
「地元の人々に揉まれながら、「ヨソモノ・ワカモノ」の隊員たちが知恵を絞り成果を上げた体験談は、どれも含蓄にあふれ読み応えがある」(抜粋)

口絵1

口絵2

口絵3

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