まちづくり道場へようこそ


片寄俊秀 著

内容紹介

良き「まちづくり人」になるための十訓とは

まちづくりは人づくりであるといわれるように、まちの様々な問題の解決には、良き「まちづくり人」の存在が必要であり、そんな人を育てたいと筆者は考える。まちに飛び込む方法、キイパーソンの重要性、常に対案を考えることなど「まちづくり道場十訓」をまとめ、まちづくりに携わる「稽古生」に向け、ユーモラスに指南する。

体 裁 四六・224頁・定価 本体1900円+税
ISBN 978-4-7615-1208-8
発行日 2005-12-30
装 丁 KOTO DESIGN INC


目次著者紹介読者レビュー書評

序 まちづくり人(びと)を育てたい

第1章 まちに飛び込む──「三田ほんまち通り商店街・ほんまちラボ」

1 自学自習型の「教育」こそ
2 商店街に学ぶ学生たち
3 ネットワークでの知恵の交換
4 少しだけみえてきたこと

第2章 わがまちを体内に取り込む──“地域めがね”のすすめ

1 わがまち再発見の方法
2 わがまち再発見からまちづくりへのシナリオ
3 まちに学び、考える
4 総合的な学習・大学生バージョン
5 地域めがねをかける

第3章 まちの宝を掘る──「中島川よみがえりプロジェクト」

1 「中島川を守る」運動SINCE1965
2 母なる川とアーチ石橋
3 橋は人と人を結ぶ
4 市民活動のひろがり
5 中島川大清掃運動から「まつり」へ
6 まつりからまちづくりへ

第4章 禍(災)を福に転ずべし──〝しのぎの防災〟のすすめ

1 防災とは「いいまち」をつくること
2 長崎大水害と中島川
3 市民による浸水調査
4 河川改修計画案をめぐって
5 眼鏡橋は現地再建で
6 都市防災のソフトテクノロジー
7 「しのぎの防災」のすすめ

第5章 ほんもののキイパーソンとは──キイパーソン列伝

1 効率よく情報を集めるには
2 キイパーソンを見分ける
3 キイパーソン列伝

第6章 対案を考える──「ムツゴロード構想」

1 対案を武器に、世論を味方につける
2 ある河川改修計画への「対案」
3 諫早湾干拓への対案
4 「ムツゴロード構想」

第7章 ひねりを加える──「三和商店街まるごとエキスポ」

1 イベントの「成功」とは
2 「ひねり」を加えたイベント戦略
3 公園計画づくり遊び
4 ほんまちラボでのイベント展開など
5 「商店街まるごとエキスポ」の提唱
6 イベント運営の理想型は「渦状星雲」状態

第8章 芽をみつけ、育てる──「太閤路地と尼いも」

1 太閤路地─水辺と路地からの都市再生プロジェクト
2 尼いも復活プロジェクト
3 芽の育て方

第9章 イメージをかたちに──ドゥ・スケッチング

1 「ドゥ・スケッチング」のすすめ
2 思考過程のビジュアル化
3 「技術」のゆがみ具合を知っておく
4 悠久の造園技術よ蘇れ

第10章 いい言葉で、まちを語る──“花鳥風月のまちづくり”にむけて

1 ネーミングの重要性
2 花鳥風月のまちづくりにむけて
3 めざす未来像を言葉で表現する

片寄俊秀(かたよせ・としひで)

一九三八年生。京都大学工学部建築学科卒業。同大学院修了後、大阪府技師として千里ニュータウン開発事業等に従事。長崎総合科学大学教授を経て、関西学院大学総合政策学部教授(二〇〇六年三月まで)。まちづくりプランナー。環境芸術家。工学博士、技術士。特定非営利活動法人ほんまちラボまちづくり道場・道場主。シンクタンク花鳥風月のまちづくり研究所主宰。
著書に『ブワナトシの歌』(朝日新聞社)『ながさき巡歴』(NHKブックス)『スケッチ全国町並み見学』(岩波書店)『千里ニュータウンの研究』『商店街は学びのキャンパス』(関西学院大学出版会)。『私たちの「いい川・いい川づくり」最前線』(共著、学芸出版社)。計画案に『諫早湾ムツゴロード構想』『野崎島ワイルドパーク』など。
〈ホームページ〉ほんまちラボまちづくり道場
http://honmachi-lab.town-web.net/

まちづくり、という内容は分かりやすいようでいて分かりにくい。それは、ある人にとっては道路をつくり、川を真っ直ぐにすること、臭いものに蓋をするかの如く小川を暗渠化することを指す。はたまた、自動車も通れないような小路に人々が溢れかえっている駅前商店街を、自動車が通れるように道路を押し広げ、高層マンションが建てられるように区画を長方形に整理する事業をまちづくりという人もいる。

然らば、まちづくり道場の主である片寄先生にとってのまちづくりとは、人づくりである。まちとは人によってつくられ、人によって営まれるものである。まちをつくるには、まず、そこで生活、活動する人をつくることなのだ、と片寄先生は言う。そう言われるとそうか、と思うのだが、人を押しのけ、人が憩っていた空間を壊して、自動車のための道路をつくることをまちづくりだと考えていた人々にとっては、これはちょっとした驚きであろう。

本書は、片寄先生のまちづくり術を理解できるように編集された指南書である。そこには、まちづくりを成功させるための鍵になる戦術が満載されている。まちは人に愛されなくてはならない。人が関与しないまちが愛されるはずがない。それには人づくりである。そして、人との関係性、ネットワークをつくりあげていき、その先に愛されるまちが見えてくる。まちが道路や小洒落たファサードによってつくられるのではなく、人と人とが共生して生活するという関係性によってつくられていることを理解している片寄先生だからこその、温もりあるまちづくりエッセンスにこの本は溢れている。そして、それは商店街が衰退し、地域風土が喪失し、地域コミュニティが弱体化し、開発至上主義が迷走している現在の日本にとって、まさに必要とされる知恵である。経済効率、経営効率といった指標に振り回され、真の豊かさとは何かを見失ってしまっている今だからこそ、人を常に中心においた片寄先生のまちづくりの理念を我々は真摯に傾聴すべきである。ようこそ、片寄まちづくり道場へ。

(明治学院大学経済学部助教授/服部圭郎)

担当編集者より

「パッとしないまちこそおもしろい」と著者は言います。そこに、何もないことを「発見」したうえで、逆に、このまちをどうすれば魅力的にできるだろうかと考えながら角度を変えて眺めていくと、急にまちが輝き始めるというのです。
ものごとを柔軟に捉えながら、発想の転換を常に意識し、そしてポジティヴな姿勢で取り組んでいく。そのような態度で突き進んでいく本書は、とってもカッコいいものに仕上がっています。

(C)

『地方自治職員研修』(公職研)2006.3

まちづくりは人づくり

「まちづくりは人づくりである」とする筆者は、まちの問題を解決する、よき「まちづくり人」を育てようと「まちづくり道場」を開くことを決意する。まちに飛び込んで、わがまちを体内に取り込み、まちの宝物を掘り、ほんとうのキイパーソンに学ぶ。他人のアイデアにもひねりを加えて、常に対案を考え、イメージをかたちにし、いい言葉でまちを語る。そんな「まちづくり道場十訓」をまとめた一冊。まちづくりを実地に学んでいこうとする「稽古生」に向け現場・実践から指南する。

『環境緑化新聞』 2006.2.15

商店街こそ良きまちづくり人の稽古場

「まちづくりは人づくり」といわれる。まちに渦巻く問題を改善し、創造し、人々に希望を与える仕事をする人──まちづくり人。著者は、まちづくり人を育てるための「まちづくり道場」を兵庫県三田市内に設立した。本書は、著者が掲げる「まちづくり道場十訓」(案)を解説していくものである。

十訓は、まちに飛び込む、わがまちを体内に取り込む、まちの宝を掘る、禍を福に転ずべし、本物のキーパーソンとは、対案を考える、ひねりを加える、芽をみつけ育てる、イメージをかたちに、いい言葉でまちを語る。

基本は「小さなことから始めるリフォーム」だという。商店街こそ良きまちづくり人の稽古場だ。

著者は関西学院大学総合政策学部教授。まちづくり道場は、同学部都市政策コースの野外実習場であった「ほんまちラボ」の約9年の実績を引き継いだもの。著者はあとがきで、「本書は約35年におよぶ筆者の研究・教育色のいわば卒業論文である」と述べている。後世のための明るい未来を創っていこうとする。