おわりに


  この本は、(財)福岡県建設技術情報センターの委託で平成13年度に行なった「住民参加による川づくり調査研究」が下地になっている。当初は同センターで研修用のテキストに使うということであったが、一カ所二カ所と調べていくうちに、「こんなにおもしろい話を研修のためだけに使うのではもったいない。もっと広くいろんな立場の人に知って欲しい」と思うようになり、センターの了解をいただいたうえで、本にすることになった。
  河川法が平成9年に改正され、これまで地域から見捨てられた排水路に成り下がっていた多くの中小河川が地域のオモテの空間として蘇る機会がやってきた。しかし、各地で行なわれている取り組みの多くはいまだに試行錯誤の段階にあり、地域の暮らしとは切り離された河川区域のなかで、相変わらずの河川改修工事をやっているだけのところがたくさんある。
  本書で多くの事例を見ながら問いかけているのは、川を地域のオモテにしてやるうえで、これまでのように川の専門家だけで川そのものばかりをいじるのではなく、まちづくりの視点から地域の住民も一緒になって川づくりを考える必要があるということである。
  この本の財産は、日本の各地で毎日地域と川とに向き合っている多くの方々から聞かせていただいた興味深い物語である。お忙しい中、我われを温かく迎えてくださった皆さん(204頁、別表参照)に心から感謝の気持ちを表したい。
  また、針貝武紀氏他多くの方から貴重な写真を提供していただき、国土交通省武雄河川事務所の島谷幸宏所長には取材先選定の相談にのっていただいた。あらためてお礼を申し上げたい。
  最後に、本書の出版を快く引き受けてくださった学芸出版社と担当いただいた前田裕資氏に、メンバーを代表してお礼を申し上げる。
  12の事例のうち、児ノ口公園、一の坂川、城原川、精進川、茂漁川、撥川、梅田川の7事例は、センターの委託調査をベースとしている。残りの5例については、樋井川と女鳥羽川は鈴木が、博多川、じげの川づくり、おもとずよび筑後川流域連携倶楽部については樋口が、この本のために独自に調査を行ない、執筆している。各章の執筆分担は執筆者紹介に付記したとおりである。全体の監修は鈴木と樋口で行なった。
  本書が川づくりをめぐる様々な立場の方たちの参考になれば幸せである。

川からのまちづくり研究会座長
樋口明彦