書 評
『地域開発』((財)日本地域開発センター)2005. 6
  流域圏という概念がある。かつて、川は水運や農業用水としての共同利用を通じて、その流域で広域生活圏を形成していた。しかし都市化とともに川は排水路となり、治水・利水に偏重し、コンクリート護岸に囲まれてしまった。
  平成9年の河川法改正により、環境保全、住民参加を意識した川づくりが各地で見られるようになった。だが単なる河川改修でなく、川づくりをまちづくりの中で考えるにはどうすればよいか。それが本書の主題である。
  本書では全国12河川の事例が紹介されている。多くの市町村が関係するという流域圏の特性、国・県・市の権限の問題、河川とまちづくりとの縦割り行政など、川ならではの問題は多い。地域の実情に合わせた取組みが必要なのは言うまでもないが、事例からは、河川を管理する国・県職員、まちづくりを担う市町村職員、専門家、住民ら参加者の役割や、まちづくり的川づくりの進め方についてのヒントが浮かび上がってくる。