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新・町並み時代

まちづくりへの提案



あとがき



 一九七四年、愛知県名古屋市有松町の絞りの老舗の座敷で旗揚げした全国町並み保存連盟は、今年で発足から二十五年目を迎えた。この節目を前に、数年前から町並み連盟では、四半世紀の町並み運動の成果を記念本としてまとめたいとの考えを持っていた。そうした中、一九九八年の全国町並みゼミを東京で開催することが決まった。そして、この「第二一回全国町並みゼミ東京大会」の開催が、記念本刊行を具体化する好機となった。

 東京大会開催まであと一年を切った九七年十月、東京大会実行委員会が発足。当初、月二回のペースで始まったプログラム内容の検討会議はいつも白熱し、分科会のテーマを決める場面では、激しく意見が衝突することもあった。「今や、町並みの定義は拡大している」「文化財以外の町並みの整備が大切」「開発優先の風潮は変わっていない」などなど、議論は常に専門的であった。

 それというのも、実行委員会のメンバーの大半は建築家や、学者、行政担当者など、まちづくりのプロであり、しかもその顔ぶれは、各地の町並みで活躍している立て役者ばかりであった。さらに、彼らの中には十六年前、前回の東京大会の企画・運営に参加した人もいて、この間の日本の歴史的環境を取り巻く変化に対する認識は、鋭敏で的確だった。

 こうして、東京大会に掲げられたテーマは、次なる町並み運動の方向を示唆し、今後の町並みづくりを進める上で、欠かすことのできない重要な課題ばかりが用意された。つまり、記念本としても申し分のない目次が約束された。いわば、東京大会実行委員の方々のお力添えのもとで、本書は完成した。

 とくに西村幸夫氏には編者として、取りまとめの労をお取り頂いた。氏のご功績は本書のまとめ役であるに止まらない。町並み運動の発展を支えてきた中心的人物のお一人として、常に各地の町並みづくりを応援してこられた取り組みは貴い。町並み連盟にも氏の助言を受けて町並みづくりを進めている地域は多い。そうした地域を含めて、本書は、苦労の中で町並みづくりに取り組む各地の町並み団体の方々とともに生み出されたとも言えよう。

 本書の刊行が可能となったのは、町並み運動の良き理解者である学芸出版社社長の京極迪宏氏のご協力によるところが大きい。編集部の前田祐資氏と知念靖広氏が、事務局の不手際をすべて無事解決して下さった。

 最後に、すべての執筆者が無償の奉仕であったことを謹んでお伝えし、本書の誕生に力を貸して下さったすべての方々に、心からの感謝の意を表したい。そして、新たなる世紀に「新・町並み時代」が多くの人々によって支持される社会が訪れることを願って止まない。(中嶋 耕)



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