大都市自治を問う
大阪・橋下市政の検証

はじめに

序 大都市自治の「光」と「影」

1  大都市自治に影をもたらした「大衆化」
2  「大衆化」した大都市自治の相貌
3  死に至る「専制都市」(ティラノポリス)に堕した大都市
4  「専制都市・大阪」に見る、日本の大都市自治の危機

第1部 大都市が陥る改革至上主義

第1章 「改革」全体主義の構造

1 大都市における大衆化と改革
2 大都市自治における「改革」全体主義

第2章 大阪市住民投票という「テロル」を検証する

1 子供の遊び場と化した政治
2 「住民投票」の政治決定それ自体が暴挙である
3 議会の決定を覆すという自由民主主義に対するテロル
4 橋下大阪市長の振る舞いは、論理構造上「業務上過失致死傷罪」と同義である
5 自由と理性の破壊者たちの進化にあわせた進化が求められている

第3章 都市居住者と社会的統合 ─地域住民か匿名の大衆か

1 住民投票における賛成票の分析
2 社会学者の視点から
3 2011年大阪市長選挙との比較
4 行政区の特性と投票傾向
5 賛成票の立脚点
6 地域住民としての都市居住者の重要性

第4章 大都市自治における「言論弾圧」

1 「都構想」を巡る七つの「事実」に対する直接的弾圧
2 「学習性無力感」に陥るメディアと学者・言論人
3 京都大学総長、ならびに国会を通した文部科学大臣への圧力
4 TV局に対する直接的な「言論弾圧」
5 大都市自治でのテロルを避けるために

第5章 「大阪都=大阪市廃止分割」構想の実体と論争

1 大阪都(大阪市廃止分割)構想の多面性
2 世界の大都市制度と比べても非常識な都構想
3 「大阪都」の議論と評価 ─大阪を集権化し、不便にし、衰退させる
4 政治過程 ─橋下市政は「大阪市廃止」の説明責任を避けたが、住民投票で否決
5 展望 ─「大阪都」構想への有効な対応

第6章 維新の党 ─右派ポピュリズムはリベラルを超えるか

1 維新の党、橋下氏の政治とは何か
2 政党システムへの大きな影響 ─右傾化への貢献

第2部 橋下市政は大阪をどう変えたか

第7章 教育再建に向けて ─ 7年余の破壊から立ち上がる人々を支えたい

1 ターゲットにされた「教育改革」
2 高校入試に「学力テスト」を利用する問題
3 首長の政治主導による教育委員会統治の危うさ
4 教職員のモチベーションの低下と現実課題の深刻化

第8章 医療・福祉の全般的削減

1 住吉市民病院廃止案で示された公立病院の重要性
2 規制緩和と民営化を進める大阪市の保育施策
3 地域の意向を踏まえず縮小・再編を強行した地域活動・地域福祉
4 維新政治の医療・福祉施策
5 維新の横暴を市民の力で止める

第9章 公務員と労組への攻撃

1 労働基本権無視と労働組合敵視
2 強制アンケートの実施
3 便宜供与打ち切り
4 政治的行為制限条例の制定

第10章 財政 ─市政改革プランと財政効果の実際

1 大阪市財政と『市政改革プラン』
2 予算編成
3 大阪都構想の財政的意味の消失
4 大阪市の財政改革への影響

第11章 産業政策における「改革」の実態

1 橋下市政下での「改革」
2 信用保証協会の廃止・統合
3 経済局の再編
4 「改革」の教訓

第12章 溶解する都市計画

1 都市計画に求められる時間的連続性と空間的連続性
2 無くなった「大阪市のマスタープラン」
3 「大阪市解体」を先取りした都市計画
4 時間的・空間的な連続性が欠落している「グランドデザイン大阪」
5 まちづくりの基本単位「自治会」との連携の劣化
6 広域行政連携の劣化
7 「改革」全体主義が都市計画を破壊する

第13章 防災─南海トラフ地震・津波への備えを急げ

1 災害に脆い大阪平野と隣接丘陵・山地
2 大阪における巨大災害の歴史
3 防災・減災行政上の課題と大阪府政・市政トップの怠慢

第3部 大都市自治の未来

第14章 大都市自治の「改革」全体主義に対抗する三つの処方箋─自由、マネジメント、そしてプロジェクト

1 すぐに忘れる大衆
2 「嘘」で自滅する大衆
3 第一の処方箋:自由な言論活動の展開
4 第二の処方箋:改革から改善(マネジメント)へ
5 第三の処方箋:制度論からプロジェクト論へ
6 全体主義の超克

第15章 大阪市における都市内自治

1 大阪市における住民自治の問題
2 大阪都構想における住民自治の考え方
3 大阪市における総合区をめぐる議論
4 都市内自治の先進事例
5 粘り強い取り組みを

第16章 脱東京の都市政策に向けて─大阪の魅力と展望

1 統計で見る大阪の地位と、地位低下の原因
2 大阪が目指すべき都市のランクは?
3 東京の模倣ではない、質を重視した成長戦略
おわりに