食のまちづくり
小浜発!おいしい地域力

おわりに


 この本は、社団法人農山漁村文化協会が発行する『食農教育』という隔月刊の雑誌に連載した「小浜・食のまちづくり」(2005年9月号から〈2006年9月号を除き〉2007年5月号まで)をもとに、新たに5つの話を加えて1冊にまとめたものです。キッズ・キッチンを中心に2回の予定で始まった短期連載は10回に延長され、およそ1年半にわたって小浜に通う機会を与えられ、たくさんの出会いに恵まれました。

 その間、またその後の小浜の食をめぐる動きはいっそう加速され、また多様になっただけでなく、挑戦を恐れない多くの市民が新しい活動を起こしていきました。そのため、本書をまとめるにあたってできるだけ再取材をして連載時の情報を更新し、新しく誕生した事例を加えて、大幅に書き直しました。それでも食をめぐる小浜の活動のすべてを伝えているとはいえません。「いきいきまちづくり」をきっかけに生まれた市内12地区の活動や、市民が自主的に開始した活動は多様で、重層的なものになっています。そうした活動の取材を通して、1人1人の人生のドラマと地域づくりとが重なりあう魅力に心を躍らせながら、深い学びの機会を与えていただきました。

 小浜での取材ではたくさんの方々にお力添えをいただきました。出口雅浩さんと奥城直喜さんをはじめ、食のまちづくり課の歴代の担当者に大変お世話になりました。また西野照さんとひかるさんには快適な宿と市内を自由に動き回れる自転車を貸していただき、ときには取材先まで車でご案内いただきました。それぞれの取材先では初めて出会う小浜の伝統野菜の栽培方法や、なれずしなど伝承料理の作り方、定置網のしくみなどを丁寧に教えていただき、あらためて環境から歴史までを含む食の奥深さに思いをめぐらせました。まあ食べてみなさいと、どの取材先でも惜しみなくおいしい食べものを出していただき、おみやげにも持たせていただきました。買わせてくださいと申し出ても、お金を受け取るような人たちではありません。たくさんの人の善意に浴しながら、恩返しができたのかと心もとないかぎりですが、お話しくださった方々の心に寄り添いながら、自分なりに考えたことを文にするよう心がけました。

 『食農教育』に連載中には編集長の阿部道彦さんにお世話になりました。食育政策専門員として活躍を続けている中田典子さん、立上げ期に食のまちづくり課長だった農林水産省の高島賢さんには原稿に目を通していただき、適切なご助言をいただきました。そして、この本を生んだ最大の功労者は学芸出版社の宮本裕美さんです。宮本さんの熱意と努力がなければ、出版にこぎつけることはできませんでした。お世話になったすべての方に、心からお礼を申し上げます。
2010年10月
佐藤由美