日本の街を美しくする

法制度・技術・職能を問いなおす

書 評
『建築士』((社)日本建築士会連合会)2006.12
 本書は、2004年に制定され、2006年6月から全面施行された景観法を契機に、都市、地域の環境・生活空間の計画とデザインに携わる専門家が参集し、日頃実践しているデザインと景観との関係について真摯な討論を行った成果の集大成である。
 「都市環境・生活空間デザイン」の領域は、建築デザイン、都市(アーバン)デザイン、ランドスケープデザイン、土木工作物デザインなど広い範囲に及んでいる。このため本書では、日本建築家協会、日本都市計画家協会、ランドスケープコンサルタンツ協会、都市環境デザイン会議などに所属する、建築、都市、造園、土木等々にわたる広範な都市環境・生活空間の計画及びデザインを職能とし、日々その実務に携わる者の横断的な協働によって、景観に関して問題指摘と解決の方向を示していることが特徴である。
 本書は8章+提案で構成され、第1章では、誰が景観をつくるのかというタイトルで日本都市はなぜ美しくならないのかと問題提起を行っている。2〜8章までは、都市デザイン、ランドスケープデザイン、建築デザイン、都市開発、地域デザイン、風景、都市計画のテーマ別における景観の問題と提案を行っている。最後に美しい街をつくるための八つの提案でまとめている。景観の問題の解決は、景観法が成立したから解決するのではなく、都市環境・生活環境の高度の総合デザインの結果であることをきちんと指摘している。
 また、実務に携わっている方々の日頃の考え方が抽象論でなく、具体的に指摘されており、景観に関する教科書としても最適である。問題の指摘のみでなく、提案としての解も用意されており、今後の景観創造への指針となろう。
(大嶌栄三)

『地域開発』((財)日本地域開発センター)2006.10
 「景観の乱れ」という一種の病があるとすれば、景観デザインに関わる第一線の実務家たちの意見を集めた本書は、「症状(現状)」のみを述べるのではなくそれに対する「処方(提言)」までを示している点で価値があるといえよう。提言には、体質改善が病気の根本治療であるように、景観改善には都市計画・建築規制・まちづくり制度そのものに抜本改正が必要であるとの危機感が感じられる。
 病気の治療に多くの人の支えが必要なように、景観改善にはより多くの主体が景観に対して良い方向に働きかけることが必要である。その点で、様々な都市関連の制度に言及している本書は、「美しい景観をつくること」が都市に関わるものにとって共通の課題であるとの認識を確認できる一冊である。まずは、ブックジャケットにある数々の写真(日本の都市景観)を見て、そこに存在する景観的課題を指摘できるかどうか確認してみてほしい。普段何気なく目にする景観に対する感覚を鋭敏にすることから景観の改善は始まる。

『環境緑化新聞』2006.3.15
 副題は「法制度・技術・職能を問いなおす」。景観法ができたから街が美しくなるわけではない。それは都市計画法や建築基準法、それに即した技術や職能に根本的な欠陥があるからだという。
 実務家にしては、日々の個々の業務で努力したつもりでも、美しい街を実現できない現実に焦燥感もあった。そういった日頃から感じていた社会システムへの疑問、特に法制度に不備があるのではないかという視点からの、具体的処方箋をまとめたものが本書である。
 8章の構成で、各章の各節で問題提起、背景分析、改善への提案がなされている。提案の実現という次なる目標へ向けて本書を発行した。2章から8章までは、都市デザイン、ランドスケープデザイン、建築デザイン、都市開発、地域デザイン、まちづくり、都市計画と各分野における美しい街をつくる条件を追求している。最終的に美しい街を作るための8つの大きな提案もある。デザインに携わる実務家36名によって執筆され、解決の方向性を示した大作。「今始めるべき4つの行動」も示されている。