日本の街を美しくする
法制度・技術・職能を問いなおす

目次

1章 誰が景観をつくるのか

1・1 なぜ、わが国の都市は美しくならないのか
1 景観をつくるのは景観法ではない
2 これまでの挫折と失敗を振り返る
3 街をつくる基本にある法・制度の構造疲労
4 街をつくる基本となる思想・概念の再構築
5 社会から信頼される専門家へ

1・2 なくしたい問題風景の数々
乱れた街並み
アメニティを損なう車優先の思想
ちぐはぐな緑とオープンスペース
親しまれてきた建物や街並みの消滅
未熟な大規模技術
荒れる街の外側
2章 街を美しくする都市デザインの条件

2・1 街並み景観をダメにしている公共施設のデザイン
1 日本の都市景観をダメにしている要素
【提案】まず最初に取り組むべきこと

2・2 問題が多い公と私の境界
1 建物のつくる景観と敷地のつくる景観
2 敷地に関わる景観上の課題
【提案】街並み誘導の原点に立ち返る

2・3 街のグレードを左右する屋外広告物、色彩、照明
1 屋外広告物だらけの街
2 色彩感覚を疑う工業製品の氾濫
3 明るすぎる街、暗すぎる街
4 社会・法制度・技術上の原因
【提案】街のグレードを上げるために

提案  都市美のための基本作法
1 シビルデザインにおける基本作法の浸透
2 対象物の数、要素を減らし、頑張りすぎない
3 都市景観全体の選択方法、体制づくり

3章 街の構造をつくるランドスケープデザインの条件

3・1 分断される風景:細切れの自然地
1 細切れの自然的景観
2 自然的景観をダメにした要因
【提案】山林・農地における自然的景観の基盤づくり

3・2 美しさが問われなかった公共空間
1 都市軸の緑とオープンスペース
2 美しさへの意欲と能力の不足 
【提案】公共施設の緑とオープンスペースによる修景

3・3 ぎこちない街なかの緑
1 景観までは考えられていない建築の緑
2 緑のことまでは、よく考えられていない都市計画
【提案】多様な取り組みでレベルアップが可能な街なかの緑とオープンスペース

3・4 劣化するプライベートオープンスペース
1 分割される住宅地
2 重い税負担・市民の無関心による劣化
【提案】資産価値維持の合意と協働が支える庭や宅地の緑

提案  地域固有の美しい風景を保全創出する仕組みと仕掛け
1 美しい景観づくりへの窓口としての緑化
2 市民の合意と協働による水と緑のネットワーク
3 法制度と税制・財源
4 専門家・専門技術・適切な材料の活用

4章 街並みを形成する建築デザインの条件

4・1 街並み・景観形成の視点に欠ける「形態規制」
1 緩和が進む形態規制の流れ
2 街並みを壊す形態規制
【提案】エリア特性に即したルールづくりを

4・2 建物複雑形態の主因「日影規制」
1 日照権保護から生まれた日影規制
2 日影規制のために景観や環境が悪化する
【提案】日影だけでなく街をつくるルールの共有を

4・3 既成市街地の「ガワとアン」
1 問題群としての「ガワとアン」
2 実務から見た課題整理
【提案】「ガワとアン」をゆっくりと改善する手立て

4・4 違和感のある景観や空地を生む「総合設計制度」
1 総合設計制度の問題点
【提案】 景観形成に寄与する制度であるために

4・5 街に活かせない「歴史的建築物」
1 街の個性を感じさせない現代オフィス街
2 古い建物が街の中にあることの意義
3 なぜ建て替えか
4 継承に立ちはだかる建築基準法と消防法
5 景観法と文化財保護法のギクシャクした関係
【提案】 歴史的建築物を地域に活かす

提案  建築デザインを活かせる仕組みづくり
1 適法な建築が生み出す貧しい都市景観
2 貧しい景観に対し設計者がすべきこと
3 分かる制度、使える制度へ

5章 街をつくる都市開発の条件

5・1 景観がバラバラになりがちな大規模拠点開発
1 大規模拠点開発の類型と傾向
2 景観上の課題

5・2 都市に美をつくり出せない市街地再開発事業
1 市街地再開発事業の背景
2 事業制度上の課題

提案  事業制度に美を組み込む
提案  ローカルマスタープランによる景観向上

1 大規模開発のかかえる課題と可能性
2 生きたマスタープラン
3 景観をつくるための官民連携

6章 美しい国土をつくる地域デザインの条件

6・1 自然や田園と調和がとれない人工的要素
1 地方固有の山並み景観を損なう大規模建築
2 眺望を妨害する電力と通信のインフラ施設
3 眺望景観を台無しにするカントリーエレベータ
【提案】縦割り行政を超えた景観施策の重要性

6・2 景観への配慮を欠いた観光都市
1 温泉地での景観の魅力喪失
2 国際級の観光地での貧弱な景観施策
3 地方の伝統的・文化的景観はなぜまちづくりに生かされないか
【提案】住み心地良さともてなし心のある固有の風景づくりを

6・3 都市計画が助長する地方都市の崩壊
1 人びとがいなくなったにぎわいの場
2 地方中心市街地の崩壊の現状と要因
3 崩壊を助長する都市計画
【提案】にぎわいの場の再生に必要なこと

6・4 放任がもたらしたロードサイドの醜景
1 ロードサイド商業がはびこる理由
2 先進的な土地利用計画に挑んだ久山町の苦悩
【提案】沿道景観をどう改善するか

6・5 田園的景観とはほど遠い計画的開発
1 田園都市にならなかった戦後の住宅地開発
2 消費生活を支える流通業務団地の醜景
3 経済を支えた景観なき工業団地開発
【提案】豊かな住宅地とライフスタイルの創出

提案  優れたデザインの投入で地域の活性化を
1 景観形成計画作成の制度化
2 開発許可制度の見直し
3 地域の景観デザインに市民権を

7章 風景を育むまちづくりの条件

7・1 記憶を継承できないまちづくりの仕組み
1 失われる街の記憶
2 生活風景を創造する戦い
【提案】生活風景の継承

7・2 変貌を迫られる近郊住宅地
1 屋敷林と農地が消えミニ開発が進行
2 大規模な土地利用転換や団地の建替えによる景観紛争の発生
【提案】近郊住宅地固有の景観と緑豊かな環境を維持していくために

7・3 変わりゆく街なかの住宅街
1 成熟への変化か、流されゆくのか
2 街の景観資産の形成・継承ができない
【提案】より良き生活空間を求めて

7・4 時代の摩擦にさらされる下町の美しさ
1 密集市街地で感じる危さと不安
2 法制度の形態規制でつくられる街の形
【提案】下町の住みごこち良さと魅力を生かす

提案  風景を育むまちづくりへ
1 公共空間を生活空間として美しく再構築する
2 土地利用制度・建築規制を地域ごとにきめ細かく見直し、美しい街並みを誘導する
3 地域資産を生かして街を美しくする
4 地域文化に根ざした個性的で美しい街並みをつくる

8章 景観をつくる都市計画の条件

8・1 景観形成に無縁だった都市計画
1 成長主義の都市計画と都市景観
2 景観形成を阻む都市計画の体制

8・2 都市計画が壊した都市景観事例とその課題
1 道路沿道は街並み景観をつくれない
2 地域地区制度が無秩序な市街地をつくる
3 景観形成とは無縁な機能開発優先主義
4 朝令暮改の制度が変な街並みをつくる

提案  都市景観をつくる都市計画制度
1 新しい都市計画制度の基本方向
2 空間計画・管理ツールとしての都市計画
3 都市計画における住民、専門家、行政の役割
4 都市景観をつくる都市計画制度と財源の提案

提案 美しい街をつくるために

提案1 都市計画・建築規制のあるべき姿
提案2 都市マスタープランへ景観計画を位置づけ、運用する
提案3 都市開発プロジェクトへ戦略的マスタープランを導入する
提案4 「ローカルルール優先」の原則に基づく制度の再構築
提案5 都市開発に景観評価システムを取り入れる
提案6 税制をまちづくりに連動させる
提案7 専門家の職能を確立する
提案8 今すぐ始めるべき4つの行動