PUBLIC DESIGN
新しい公共空間のつくりかた




おわりに


 おそらく僕たちは大きな社会システムが変換する、その入口に立っていると、この本をつくりながら考えた。
 今までの常識とは少し違う方法で、しかし着実に新しいタイプのパブリックスペースをつくり、運営し、継続しているケーススタディを探した。結果、浮かび上がってきたのがこの6人だった。その名前とプロフィールを並べてみてあることに気がついた。全員が僕より年下だったのだ。取材当時、最年少の木下斉が32歳、最年長の樋渡啓祐でも45歳だった。なんとなく自分が旧体制の人間で、彼らがそれを変えてゆく改革者のような気がして、正直少し戸惑った。話を聞きながら、僕は彼らの活動を方法論として捉え直す翻訳者の役割を負っているような気がした。
 6人を年齢の若い順に並べてみると、興味深いことに気がつく。若いほど社会システムやマネジメントに対しての感受性が強く、40代はまだリアルな空間に拠って立っている。それはただの偶然かもしれない。でもそこに何らかのメッセージを感じた。だからそれをそのまま収録の順番とした。
 僕は彼らの方法論に新しい資本主義の姿をうっすらと感じることができた。ぼんやりとしたイメージでまだはっきりとした姿が見えているわけではないけれど、彼らから新しい社会を動かすしくみを感じることもできた。
 最後に、多忙ななかインタビューに快く応じてくれた6人の実践者の皆さん。どの取材もとても印象的で、忘れることのできない時間でした。インパクトのあるグラフィックデザインをしてくれたのは今回もASYLの佐藤直樹さんと中澤耕平さん。的確なアドバイスをくれながらとりまとめてくれた学芸出版社の編集者、宮本裕美さん。設計などの本業の合間を縫って取材から構成まで一貫して支えてくれたOpen Aの塩津友理さん。皆さんの協力なくしてこの本は存在しませんでした。とても感謝しています。ありがとうございます。

2015年2月 馬場正尊