まちづくりのための
建築基準法 集団規定の運用と解釈


書 評
『土木学会誌』((社)土木学会)2006.1
  建築基準法の運用と解釈は、一定しているというのが建前だが、現場は日々“想定外”の事態に混乱している。本書は「市街地環境制御、それは建築基準法の役割である」との認識のもと、集団規定の背後にある考え方を示し、法令では明文化されていない事例に対し、現場判断の手がかりとなる材料を提供しようとする意欲的な試みである。建築行政関係者にはもちろんのこと、まちづくり関係者にも、実行力のあるまちのルールづくりを考える際の、格好の理論的・技術的な手引書である。
  本編は、そもそも基準法でいう「最低基準とは何か?」を財産権、条例での上乗せとの関係などから問う第1章に始まり、全8章で構成される。以下、第2章「敷地概念とその管理」では、敷地の二重使用など、敷地にまつわるさまざまな問題を取り上げ、その対応策の例として茨城県つくば市の条例に基づく敷地の認定制度や、GISを用いた敷地情報の管理の可能性を紹介する。
  第3章「集団規定と単体規定のつながり」では、集団規定の本来的な目的を3つの角度から整理する。すなわち@単体規定の成立を保障する前提として、A単体性能に反映できる市街地確保の条件として、B建築物の集団によって形成される市街地環境のあり方を定めるものとして、といった切り口からおのおの集団規定の役割を再確認している。
  第4章「4m未満道路の取り扱いと接道規定」では、法施行後50余年を経ていまだ残る4m未満の狭隘道路の問題について、市街地建築物法時代より道路幅員基準や接道義務規定が段階的に引き上げられ、それに伴い経過・救済措置を繰り返してきたという経緯などから解説。そのうえで、まちづくりの側面からの狭隘道路対策の可能性として、街並み誘導型地区計画、用途・構造上の制限条例、3項緩和規定などの組合せによる活用などを検討している。
  こうした論点整理を経たうえでの、第6章「地域地区の決定と特例許可の法的構成」、第7章「自治体による独自基準採用の可能性」の2章は、特に都市計画・まちづくり関係者にもかかわりが深いだろう。第6章では、集団規定の内容を定める3通りの決定方法(都市計画決定、条例制定、特定行政庁による指定)がどのような観点から使い分けられているのかを整理。そのうえで、特定行政庁が行う「指定」と対比しつつ、個別建築計画の可否を判断する許可・認定の位置づけを行っている。
  この章では、また近年の法改正が、特定行政庁の決定事項が拡大方向(白地地域の形態制限、道路斜線規制値等)にあることに言及。建築行政に計画的な意思をもたせ、特定行政庁の役割を変化・拡大させつつあると推論している。
  第7章では、高度地区、50条条例、地区計画など、自治体がオリジナルに制限を構築できる制度について、昨今の先駆的な事例を通して、その可能性と限界を考察。そうしたなかで、分権一括法以後、50条条例の可能性が拡大していることに言及している。このことは、前章で述べる特定行政庁のあり方の変化とあわせ、今後、区市町村がきめ細かなまちづくりを目指し、独自の市街地像を描く際、建築行政の果たす役割が増大していくことを意味するのだろう。こうしたまちづくり・建築行政の有機的な連携による実効性のある市街地コントロールには、まちづくり・建築行政双方の知識・技術に精通したスタッフの存在が不可欠である。そうしたスタッフの育成に、本書は必読の一冊となろう。