成熟のための都市再生


あとがき

 本書は、建築基準法の集団規定に関する研究会における討議がきっかけになっている。この研究会では、1年間にわたり、集団規定に関連する様々な課題(制度創設・改正時の時代背景、規制の効果や現代的な意義等々)について、専門家のヒアリング及び参加メンバーによる討議を行った。
  研究会終了後に、座長を務められた柳沢氏の発案で、研究会で議論した内容を発展させて、新たな観点から1冊の本にまとめることとし、それぞれのメンバーが分担して原稿を作成することとした。執筆に当っては、各テーマの主題について解説するとともに、理解を深めるため一問一答形式のポイント解説を加えた。
  当初、簡単にまとめられると気楽に考えていたが、いざ着手してみると、提出された原稿案に対する打ち合わせの段階で様々な意見が出され、さらに、新たな項目の追加が提案されるなど、予定していた全体構成についても見直しが必要になり、結果的に多くの日時を要することとなった。また、当初の研究会には参加されていなかった礒崎氏にも途中から参加いただき、ようやく、今回上梓することができた。
  なお、本書の内容については、全体での議論を踏まえていること、また、柳沢氏を中心に編者らが一応の内容整理をしていることから、ある意味で執筆者全体の共著ともいえるが、最終的にはそれぞれ分担した執筆者の責任において記述していることをお断りしておく。
  建築基準法は頻繁に改正が繰り返されている(本書の準備中の2004年6月にも大改正が行われた)。今後の法律のあり方を考えるためには、一度立ち止まって、じっくりとその拠って立つところを明らかにしていくことも必要だと考えられる。本書がその要請に応えられているかは、読者のご批判を待つほかにないが、私たちは、集団規定の背景にある考え方等を解明すべく可能な限り取り組んできたつもりである。
  もとより、本書で記載された内容については、別の考え方もありうると思われる。あるいは異議がある方もおられると思う。本書を契機として、様々な議論が巻き起ることを期待している。

 学芸出版社の前田裕資氏と越智和子氏には、大変お世話になった。表現方法等について細かいアドバイスをいただき、短期間に手際よくまとめていただいた。両氏のご助力がなければ、本書は日の目を見なかったと思う。なお、本書執筆のきっかけとなった研究会については、日本建築センターの井手幸人氏と田中隆司氏にお世話になったことを記して感謝の意を表したい。

2005年6月
山島哲夫