小規模マンション

管理と運営の事例108

はじめに

「小規模マンション」!?
  この言葉に惹かれて本書を手にしたあなたは、ひょっとしたら小規模マンションが持つ、悩ましくも愛しい諸問題に日々思いを巡らせておられるのかもしれません。
  マンションのストックは、2005年末現在、すでに約485万戸に達し、そこに居住する人びとは約1300万人、東京都の人口(2006年9月1日現在、推計1264万人)を超えています。しかも、1980年には22.5%に過ぎなかった永住意識が、2003年には48.0%(国交省総合調査)にまで増え、約半数の居住者は、マンションを「終の棲家」と考えています。
  では、本書の主題である小規模マンションは、そのうちのどれくらいの比率を占めているのでしょうか?
  残念ながら全国的なデータが整備されていませんが、東京23区内では、住戸数30戸以下のマンションが約34%を占めているという報告(民間調査)があり、東京に限らず、地方の都市部においても小規模マンションの占める割合が非常に大きくなっています。
  そこには、そしてどこにでも、いわゆる「小規模マンションにまつわる問題」が無視できないぐらい存在し、社会的にも大きな課題になっています。
  住宅総合研究財団ではこの問題に着目し、2003年4月、「小規模マンション管理の課題と解決策に関する調査研究委員会」を設置いたしました。
  この調査研究の調査対象マンションは53件と少ないものでしたが、全マンションにヒアリングを実施し、個々のマンションに内在する問題を深く捉えることを目指したもので、2005年3月、報告書としてまとめられました。
  この調査結果を踏まえ、また、報告書の53件には含まれなかったマンションの事例も多数取り入れながら、そのエッセンスを、日々「小規模マンション問題」に取り組んでいる管理組合の皆様、そしてその支援に励んでいる各分野の専門家、行政担当者の皆様にお伝えしようというのが、本書の狙いです。
  本書では、次のことを心がけました。
・小規模マンションに多い問題をテーマ別に検討してみます。そして、できるだけ実践的な解決法を探ってみます。
・その上で、実際にはさまざまな問題が複雑に絡みあって起きる現象を理解するために、いくつかの事例を取り上げ、その経緯や問題の構造などについても見ることにします。
・一見、同じような問題であっても、それぞれのマンションの個性によって異なった解決法が発見されている現実を尊重し、「1つの正解」だけではなく「多様な正解」があり得ることも見ることにします。
  最後に、この本を作成するに当たり、ご協力くださった皆様、またこの本の原点となった調査報告書作成にご協力くださった管理組合の皆様、調査委員の皆様、また委員会で貴重なご助言やご提言をいただいた地方公共団体の皆様に、心から厚くお礼申し上げます。

2006年11月
財団法人 住宅総合研究財団
研究統括部長 柴原達明
「小規模マンション 困ったときの処方箋」編集委員会
委員長 三井一征