都市のデザインマネジメント
アメリカの都市を再編する新しい公共体


あとがき


 アーバンデザイン研究会は、ちょうど2000年に最初の会合を開いた。固定したメンバーではないが、それぞれにアメリカのアーバンデザインに関心を持ちあるいは実際に関わった経験のある人達で構成している。私が、1997年に横浜市の都市デザイン室長から現在の東京大学に移り、文部科学省の科学研究費と海外動向調査を受けて、1997年から2000年にかけてアメリカの都心再生の調査を行った際に現地で知りあったメンバーが加わっている。アメリカのアーバンデザインの事務所や大学の研究室で活躍していた人達である。本書の作成のために、その後もメンバーが現地調査を行っており、本書に掲載した各事例について、都市再生へ向けて市民や関係者が様々な局面で課題をどう受け止め判断してきたかという微妙なニュアンスも含めて適切な情報が整理できたと考えている。
 社会や価値観のドラスティックな変化、また分権化の流れのなかで、従来の全国一律的なアプローチ、問題個別対応型の施策、事前確定的な計画、硬直的な事業執行や管理では、もはや現実的で変化に柔軟に対応できる都市経営を進めることはできなくなっている。日本の都市や地域は、空間資源のストックや社会・文化的な個性などを手がかりに、それぞれに合った多様で豊かな都市空間モデルの構築と、その実現に向けた手法や組織、プロセスを描き出すことが求められている。社会的文脈も都市制度もわが国とは異なっているが、本書で示したアメリカンアーバンデザインの1980年代以降の経験、特に都市再生に向けた発想と理念、そして空間像の描き方と協働事業の組み立て方が、今後日本の各地で進められるであろう様々な都市再生の試みに大きな示唆をもたらすことを期待したい。
 本書のための調査を行っているさなか、ニューヨーク・ワールドトレードセンターへのテロ行為に始まる混乱があった。痛ましい事件であり、ニューヨーク在住の星野氏(3章執筆)から話しを聞くほどに、衝撃を受けるものであった。これからどう復興していくのか、広く市民が参加した議論が展開されている段階である。是非とも将来に渡り引き継がれていく空間として再生されることを願っている。

 最後になったが、私達の調査に協力いただいたアメリカの関係者及び研究会のメンバー、出版の機会を与えていただいた学芸出版社、そして編集部の前田裕資氏、中木保代氏に深く謝意を表したい。

2002年9月
アメリカン・アーバンデザイン研究会
代表 北沢 猛










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