一級建築士設計製図試験
エスキースアプローチ
■本書の目的と位置付け
一級建築士試験は、学科、および製図試験とも、近年それまでのレベルとは明らかに一線を画する「21世紀の一級建築士試験元年」とも言うべき、非常に厳しい合格率となってきております。
かつては〈独学で合格できた試験〉が、〈専門学校に通わなければ合格が困難な試験〉になり、ついには〈専門学校に通っているだけでは合格が困難な試験〉に変貌してきた、と言ってよいでしょう。
では、どうすれば合格できるのでしょうか?
私ども、学科製図.comでは、これまでインターネットを通じて、様々な試みに挑戦しつつ、そのノウハウを高めてきました。本書は、合格へ向けたノウハウのエッセンスの部分をとりまとめ、1冊の本として受験生の皆さんに公開するものです。
既に世の中には、一級建築士製図試験の基本をイロハから解説する書籍が数多く出版されています。本書は、それらの書籍で積みあげた基本ができつつもこの試験に合格できていない受験生、社会的にも第一線で活躍されていながらこの製図試験が乗り越えられないベテラン受験生、こうした方々に特にエスキースの手順・考え方のみに的をしぼったテキストとして、ぜひ活用していただきたいと考え執筆いたしました。
また本書では、〈試験〉を〈クライアント(発注主)〉に見立て、試験勉強をすることで実務にも力がつく、実務をしながらも試験にも意識を集中していけるように、その内容を組み立てています。この手法は、一級建築士試験のみならず、これからの生涯学習のひとつのあり方だと考えております。
一読後、では何をすべきか、どうしたらよいのか、何をしなければならないのかを明確に把握して、その上でどのように行動しなければならないのかを発見していただくことで、少しでも合格に近づけることを願っております。
学科製図.com
主宰 曽根 徹
■本書の構成
「敵を知り己を知らば百戦あやうからず」(孫子「兵法」より)
孫子の著作「兵法」には、「敵を知り己を知らば百戦あやうからず」という教えが残されています。一級建築士製図試験にこの教えをあてはめて、考えてみましょう。
この製図試験で不合格の決定的要因とされているのが、「未完成」ですが、その原因はどこにあると思いますか?
統計上は、「図面を描くことが遅い」という製図力の問題や、「エスキースといわれる計画力が足らない」という問題が、多くの原因として挙げられています。
しかし、なぜ、図面を描くことが遅いのでしょうか? なぜ、エスキースする計画力が足りないのでしょうか? いつも原因は受験生の側にだけにあるのでしょうか?
いつのまにか受験生、いや、設計製図を教える側である講師も、試験問題を固定概念視してはいないでしょうか?
本書では、この製図試験のしくみ、特徴とも言うべき点を、考え得るかぎり明らかにし、その上でどのような能力が要求されているのかを明らかにし、その能力を身につけるためにはどうしたら良いのかをまとめました。冒頭の「兵法」のごとく、「製図試験の特徴を知り、自身の足りない能力の部分を知って研鑚を重ねれば、不合格になることなし」を解説する構成となっています。
■各章の構成
第1章 試験という名のクライアント 試験を「クライアント(=発注主)」ととらえて、忘れてはならないその特徴を、大きく5点にまとめます。
第2章 試される5つの力とやってはいけない図面 試験で試される建築士としての能力を、5つに分類し、その上でこの試験でやってはいけない図面及びその内容についてまとめます。
第3章 エスキースアプローチ 具体的なエスキースの進め方について、その手順を解説しています。
第4章 公共施設系課題 解法事例(平成12年度)
第5章 集合住宅系課題 解法事例(平成13年度)
エスキースアプローチをつかって、具体的に過去の課題の解法プロセスを解説します。
最終章 試験までの学習ポイント 試される5つの力について、求められる能力と、そのための学習トレーニング方法についてまとめました。