幸福な田舎のつくりかた
地域の誇りが人をつなぎ、小さな経済を動かす

あとがき


 2010年、2つの事業に関わることとなった。農林水産省の地産地消普及拡大事業委員会(運営:まちむら交流きこう)と、高知県農業創造人材育成事業総合アドバイザーである。

 このなかで提案をし実現したのが、先進地における合宿である。現場に関わる人たちが、元気な地域に行き、ノウハウを学び、お互いの知恵を交換しあうことで、より深い学びと現場で使える知恵の共有化ができる。ここから多くの交流と実践が生まれた。

 合宿で親しくなったのが本書に登場する四万十ドラマの畦地履正さん、JAおちいまばり さいさいきて屋の西坂文秀さん、JA雲南の須山一さんたちである。

 もう1つ、食のまちづくりや食育のアドバイスを求められ、2000年から各地で始めたのが、食のワークショップである。これに地域調査を加え食材のテキスト化を行い、料理家との連携で、地域の人たちがノウハウを学ぶという形になったのは、2006年の大分県竹田市からである。こうすれば、地域の味や豊かさが実感でき、地元のよさを発信できる。その後、茨城県常陸太田市、兵庫県豊岡市、岐阜県高山市、高知県、岡山県奈義町、茨城県小美玉市、神奈川県小田原市、宮城県石巻市など、さまざまなところで開催してきた。

 こんな活動を始めたのは、大きな経済の話や地域活性化の取り組みも必要だが、現場に行くと、小さくても、ものづくりや発信の工夫で多様な展開ができるとわかったからだ。

 地方に行くと、大きなイベントでたくさん人を集めることばかりに目がいきがちになる。小さいところからしっかりつくることを始めよう。元気なところに行ってしっかりノウハウを学ぼう。こうして始めた活動が今、着実に広がりつつある。

 この本の依頼があったのは2010年であった。明治大学、フェリス女学院大学などの講義、『地方行政』『月刊JA』『月刊社会民主』『月刊ガバナンス』などの連載で取材したものをベースに、新たな取材を加え書き下ろしている。執筆を進めるなか、東日本大震災が起こった。震災後、各地を巡ると、地域のよさを自ら発見してきたところは、変わらず元気で、新しい価値観を創造し、共感を得られる場所となっていることを再確認した。

 この間、ずっと地域づくりの本を書くことを応援し続けてくれた母・金丸美恵子が八七歳で亡くなった。その母にまっさきに報告をしたいと思う。また陰で支えてくれた妻・早苗とその家族に感謝を述べたい。

 2年以上も辛抱強く待ってくださった学芸出版社の宮本裕美さんに感謝申し上げます。そしてなにより各地で取材にご協力いただいた多くの方々に心より御礼申し上げます。

2012年9月15日
金丸弘美