トラムとにぎわいの地方都市
ストラスブールのまちづくり

推薦の言葉 青山吉
はじめに

1章 にぎわう環境都市・ストラスブール

1 歩いて楽しいトラムのまち

ストラスブールってどんなまち?/ライン河の向こうはドイツ/ストラスブールの複雑な歴史/欧州機関が集中するストラスブール/歩いてドイツに渡れる橋と素晴らしいライン河岸公園/活気あふれるまちなかの歩行者天国/国際大学都市としてのストラスブール/新しいまちの顔―便利で美しいトラム/自転車利用でもパイオニア

2 ストラスブールも少し前まではクルマ社会だった

衰退する路面電車/「車が多くなりすぎる」と「車を排除してしまう」/フランス人と車

3 トラムへの転換

車中心のまちづくりの見直し/6年ごとにトラムが完成するフランスの地方自治体/今ではフランス22都市でトラムを運行/車と共生する「マルチモーダル」な時代へ/ストラスブールの転換/トラムか無人運転地下鉄か/ストラスブールの先見性/フランス社会におけるまちづくりの課題と交通権

2章 トラムの導入と発展

1 トラム導入が決まるまで―トロットマン元市長インタビュー

マニフェストにトラムを掲げて当選/初代のトラム選択は波乱続き/商店街はトラムに反対

2 総合的な交通政策のもと次々とトラムを導入

5年で最初のA線が開通/A線の成功をふまえてB線工事へ/政権が代わっても工事は続く/トラムを受け入れた市民

3 ストラスブールのトラムの特徴と沿線のまちづくり

まちと調和するバリアフリー車両/トラムの乗り方と料金体系/インターモーダリティとパーク・アンド・ライド/自動車の迂回政策と走行規制/都心の路上駐車スペースを削減/都心の住民と商店への配慮/事故と障害者への配慮/アートを楽しむトラムの駅と沿線の景観整備/トラムと空間設計

4 トラムを運営するしくみと財源

フランスの地方自治のしくみ/トラムの事業主体はストラスブール都市共同体(CUS)/トラムを実際に運営するストラスブール交通公社(CTS)/地方自治体の財源/トラムの財源と交通税/トラムをめぐる法規制/都市交通計画(PDU)とは?/ストラスブールの都市交通計画

5 合意形成の手法「コンセルタシオン」とは?

コンセルタシオンの定義/コンセルタシオンの法的背景/コンセルタシオンのプロセス/ストラスブールのコンセルタシオンの歴史/市民の声

6 行政からみたトラム―マルク元トラム局長インタビュー

トラムにたずさわって20年/トラム局は専門家集団/工事はどのように進むのか/トラムプロジェクトに反対する市民/トラム計画で市民直接投票を決して行わない理由/なぜフランスではトラム経営は赤字でもいいのか/トラム導入をまちづくりの起爆剤にする

Column トラムの導入は大気汚染防止に効果があったか

3章 トラムを軸にしたまちづくり

1 トラムを軸にした大型都市整備プロジェクト

「寒くて暗い」イメージだったアルザス/行政主導の大型プロジェクト/空港へのアクセス整備/中央駅の歴史的大改造/都心部広場の整備/トラムの延伸

2 明るく魅力的なまちへの再生

ケラー前市長インタビュー―トラム工事の差し止めと沿線の社会的不安地区の整備/ストラスブール市の文化予算の割合は24%!―パイヨー市議インタビュー/マルシェ・ド・ノエル(クリスマスマーケット)にみるまちおこし戦略と経済効果

3 トラムの商店街への波及効果

「シャッター通り」が存在しない理由/人口と雇用の増加

4 トラムを補完する交通まちづくり

フランス初のカーシェアリング事業/カーシェアリング事業創始者へのインタビュー―まったくエコでなかった一市民がカーシェアリング活動にたずさわるまで/低炭素社会実現に向けての100台のプラグ・イン・ハイブリッド車社会実験/フランスで一番早かったストラスブールの自転車政策/自転車の利用状況

Column フランスのまちづくりをめぐる法制度―美しいまちは誰がつくるのか

4章 環境都市のトップランナーとして

1 リス現市長インタビュー―これからのストラスブール

まちのデモクラシーを謳う新市長/コンパクトシティとエコシティ構想/欧州都市を目指すストラスブール/トラム導入成功の秘訣―自治体の高度な政治判断と地方分権

2 ローカルデモクラシーの深化

「市民のためのまちづくり」に大切なローカルデモクラシー/実地体験型協議を行った「シャトー広場の用途変更プロジェクト」

3 コンパクトシティへの取り組み

フランスの環境政策の基本をなすグルネル法/エコシテ・エコカルティエ計画―ユンド市議インタビュー

4 これからのストラスブールの交通政策

モビリティと交通局長・メヌトー氏インタビュー/フランスとストラスブールの今後の交通政策の動き

Column フランス社会に根付く「アソシアシオン」

5章 住みたいまちをつくる

1 フランス人の生活観と自然観

フランス人のエコライフ/自然と環境保護に向き合うフランス人の生活態度

2 地方のまちづくりを支えるもの

アルザスに帰ってくる人たちの地元愛/みんなが住みやすいコンパクトシティ/ストラスブールでトラム導入と都心活性化が成功した理由/日本のこれから

おわりに
謝辞
参考文献
参考年表