光の景観まちづくり


おわりに

 「光のまちづくり」をテーマとした出版をしてはどうかという声が関係者の間で出たのは、「大阪・光のまちづくり企画検討委員会」が設置されてから3年目の大阪での光のまちづくり活動も軌道に乗ってきた段階である。「出版を通して新たなコラボレーションが始まるかもしれない」「12月の中之島で展開する光のルネサンスに間に合わないかなあ」という大阪らしいノリからスタートした。
  繰り返しになるが、都市の活性化には機能性、効率性の追求と同時にその都市らしい個性あふれるまちづくりが必要である。大阪では、都市の持つ歴史と水都のポテンシャルを生かした「四季折々の花と緑あふれ、美しい光に彩られる水の都」のまちづくりを行うべく、2002年に、行政、経済界のトップからなる「花と緑・光と水懇話会」が発足し、同時にそのコンセプトを実施すべく「大阪・光のまちづくり企画推進委員会」が設置された。大阪には、大阪城や中央公会堂といった歴史資産、そして何よりも八百八橋といわれた大阪ならではの川という資産があり、川をテーマにしたライトアップは大阪独自の特徴的なものになる可能性がある。

  我々は、大阪の光のグランドデザインの策定に先立ち、光の先進国といわれた海外の事例をスタディすることから検討を開始した。海外の都市では、リヨンをはじめ、それぞれの都市が熱心な取り組みを展開している。それらの都市での成功のポイントは、中長期のしっかりした都市戦略、トップのリーダーシップ、加えて官民協調のしくみの存在であると感じたが、大阪での活動の推進においても、その重要性を改めて認識している次第である。
  今回の、この本は「大阪・光のまちづくり企画推進委員会」のメンバーが中心になり分担して執筆したが、海外の事例、国内の事例、そして大阪での実践の様を紹介し、最後に光と都市という視点からまちづくりについて考える構成とした。
  ライトアップは単に明るいだけでなく、感動的な美しさが必要であり、それをつくりあげるには、官民が協調したまちづくりのしくみが本来の意味で機能することが大事になってくる。そういう意味で、まちづくりのしくみに関しては、この本が、照明関係者だけでなく、他のテーマを課題としたまちづくりに取り組んでいる関係者にも参考になれば嬉しい。

  制作に当たりご多忙中お時間を割いていただいた面出先生、宮城先生、橋爪先生はじめ執筆者の皆様、編集に有益なアドバイスをいただいた(株)学芸出版社の前田裕資様、(株)ヘミングウェイの前波豊様、資料提供などにご協力いただいた松下電工(株)の豊留孝治様、(株)ライティング・プランナーズ・アソシエーツの平岩洋介様、並びに関西電力(株)の富永和之・村山司両氏に敬意を表する。
 最後に一言。美しい光は魂を揺さぶる。21世紀は都市のシンボルとしての光が市民権を得るのではないかと思う。ライトアップは都市を訪問する人々へのホスピタリテイを表現するものであり、世界とその都市との交流のキーワードでもある。都市再生、地域活性化という切り口から言えば、都市間競争の時代を迎えて、人々に熱く訴えるものを持たない都市は衰退していくことを考える時、光はそのヒントを提供しているように思う。光のまちづくりによる大阪再生を提案している同委員会のメッセージを読者に感じていただければ幸いである。

(大阪・光のまちづくり企画推進委員会:委員長 室井明)