光の景観まちづくり



書 評
『地域開発』((財)日本地域開発センター) 2007.9
 本書は「光のまちづくり」をテーマとし、国内外の個性的でユニークな例を取り上げた前半の2章と、大阪での実例のプロセスを例示して都市の景観と照明や街の陰影とのかかわりについて考察する後半の2章とで構成されている。
 国内外の最新の事例と、大阪における「光のまちづくり」実践のプロセス、そして都市における光の存在について考察した本書は、照明デザインのみならず、建築、ランドスケープデザインを志すものにとっても良質な参考書といえる内容である。
 また、全章を通じて、ランドスケープデザイン、照明デザイン、都市文化研究の第一線の執筆者がリアリティのある分析と解説を行っている。その解説が個々の専門手法などに及んでいても、それらを専門的な解釈のみで語られることなく、努めて一般的な言葉を使う配慮が見られる。照明に関する予備知識がなくても、「光の都市景観」について知識と実践のプロセスを知ることができる良書であろう。

『建築士』(鞄本建築士連合会) 2007.7
 昼と夜では、同じ都市の景観でも演出の方法と可能性において大きく異なる。
 従来のライトアップに加え、光をテーマとした町おこし、まちづくりイベントが盛んである。本書はその代表である「大阪・光のまちづくり」に携わった著者らが、国内外の先進事例を紹介し、地域・都市再生への効果を示すとともに、大阪の取り組みから、企画・社会実験の仕方や手順、問題解決の方法など実践的ノウハウを伝える。
 パリ・リヨン・トリノ・プラハ・シカゴの世界の5都市の特色を生かした光の町づくりが、読者をわくわくさせる。百年以上のライトアップの歴史を背負うエッフェル塔。行政が積極的に関わり、パリ市は「世界一夜景の美しい都」と呼ばれ、全市全域に普及したイルミネーションは、観光集客や市民生活の安全性にも多大に貢献している。
 横浜・神戸・京都・東京丸の内・門司・津和野の日本の光のまちづくりは、それぞれの地域特性や地域の資源を活用した街あかりや景観照明で、季節の風物詩として引き継がれている。残念なのは、巻頭の15頁だけがカラー写真で、本文の写真はモノクロなので期待が半減してしまう。全てがカラー写真だったら、更に視覚的に読者に訴えたに違いない。著者と編集者の、ギリギリの選択に対する断腸の思いが伝わってくる。
 毎年12月が近づくと、各都市の目抜き通りの樹木や住宅街に、イルミネーションが溢れ返るが光害か。  著者は「光の増量だけに価値を見た時代に早く終止符を打たなければならない。夜は暗いものなのだと思う。暗さの中にこそ美しい明るさが際立つのだと思う」。私も同感だ。
 まちづくりの担い手と、景観行政担当者に一読を薦めたい。
(吉木 隆)

『環境緑化新聞』 2007.2.1
 2006年、東京・表参道のイルミネーションが復活した。そのデザイナーの面出薫潟宴Cティングプランナーズアソシエーツ代表取締役も本書の著者の1人である。著者は面出薫+大阪光のまちづくり企画推進委員会。2002年に大阪のまちを光で魅力的に創り上げようと発足した委員会である。本書は委員会による大阪の光のまちづくりを紹介し、照明関係者だけでなく多くのまちづくりに役立つことを期待するものである。
 1章ではパリやリヨン、2章では横浜や神戸など、委員が自ら調べて歩いたという世界や日本の光と街の事例を取り上げている。大阪における委員会の実践を紹介しているのは3章。議論された内容やプロセスについて細かくまとめられているのでとても参考になる。
 4章は、委員の橋爪紳也大阪市立大学都市研究プラザ教授が都市の賑わいの視点から、宮城俊作奈良女子大学生活環境学部教授がランドスケープの視点から寄稿。面出氏も、都市照明の手法や光の景観まちづくりの実態を光と闇という人間本来のあり方に立ち返り紹介している。

『Argus-eye』((社)日本建築士事務所協会連合会) 2007.4
 従来のライトアップに加え、光をテーマとした街おこし、まちづくりイベントが盛んである。これまで以上に夜景はその都市の価値評価に直結し、心を尽くした「光のまちづくり」が不可欠になってきている。本書はその代表である「大阪・光のまちづくり」に携わった著者らが、国内(横浜・神戸・京都・東京丸の内・門司・津和野)や海外(パリ・リヨン・トリノ・プラハ・シカゴ)の先進事例を紹介し、地域・都市再生への効果を示すとともに、大阪の取り組みから企画・社会実験の仕方や手順、問題解決の方法など実践的なノウハウを伝える。他のテーマでまちづくりに奮闘する人にも参考になる一書だ。