都市美


書 評

『地域開発』((財)日本地域開発センター)2006.9
 2004年12月に景観法が施行され、日本の景観行政に携わる者にとって、改めて「美しい都市」とは何かということが問われている。そもそも「都市美」という言葉は、単に客体的に都市を鑑賞するというだけでなく、美しい都市を自ら造り上げるという主体的なニュアンスが込められている。そのため「都市美」の議論には、それが単なる個人の嗜好にとどまらず、個人の権利を規制する公共性が常につきまとう問題であるという難しさがある。
 本書は欧米諸国並びに日本を対象として、美しい都市を造りあげるという「都市美」理念がいかに獲得されるに至ったかという歴史の整理を通じて、この難問に答えようとしている書である。各章はそれぞれ執筆者が独自の視点から論を展開する構成となっており、いずれも各国の歴史を巡る詳細な調査分析に基づく内容である。今後の都市の景観整備のあり方を考えるにあたって多くの示唆を与えてくれる一冊であろう。

『都市問題』((財)東京市政調査会)2005. 8
  2005年6月1日、景観法が完全施行された。日本では自然や都市の景観に関する行政が、欧米に比べて立ち遅れていると言わざるを得ないが、これにより国を挙げての景観行政が本格的にスタートしたと言える。今後、自治体は景観に配慮したまちづくりの姿勢をますます求められることになるだろう。
  本書は「自然美」に対しての「都市美」について、西欧諸国における美観の思想・理念の源流、および施策の歴史をたどり、「美の公共性」がどのように確立してきたかを明らかにしている。また、米国における景観運動について、19世紀後半から近年にわたって紹介している。さらに、日本での都市美をめぐる運動の動向を振り返って、それを踏まえた考察・提言も行っており、これからの景観行政のあり方や方向性を考える上で大いに参考になる一冊といえるだろう。