次世代のアメリカの都市づくり


書 評

『地域開発』((財)日本地域開発センター)2005.10
 アメリカ大都市の抱える大きな問題の一つは自動車の普及にともなう郊外化とコミュニティの問題であろう。そのような中で、1990年代にピーター・カルソープによって提唱された「ニューアーバニズム」はTOD(公共交通指向型開発)をコンセプトに含み、アメリカの伝統的なコミュニティの価値を再発見する動きとして注目を集めている。
  本書はピーター・カルソープ自身によって記されたニューアーバニズムの理論的基礎を築いた1冊であり、アメリカ大都市の現状分析と改革の必要性についての一般論が展開され、都市づくりの戦略や多様な状況に適用可能なデザイン・ツールとしてのガイドラインが解説された上で、地域計画から小規模なインフィル開発地までさまざまな空間スケールにおけるガイドラインの適用例が紹介されている。
  本書を通して理論面、実践面からニューアーバニズムに対する理解が得られるだけでなく、他方で自動車に依存する日本の多くの都市とコミュニティの再構築を考える契機ともなりそうな1冊でもある。

『新建築』((株)新建築社)2004. 9
  自動車社会の進展に起因する米国の大都市における郊外地の開発と都市中心部の存続や活力の影響について分析したものである。またそこから持続可能なまちづくりの具体的な手法について論じる。近年、わが国においても地方都市の景観は、郊外における大規模量販店の進出とそれに伴う駅前商店街の衰退に代表されるようにその様相を大きく変えてきている。本書で論じられている米国の都市とわが国の都市の発展形態は完全に同じだとは言えないが、本書はその解決に向けて一助となるだろう。
(L)

『建設通信新聞』 2004. 7. 20
  アメリカンドリームの象徴であった郊外住宅地は、多くの都市問題を生み出した。大規模なスプロール(虫食い状態)を始め、都心部での居住人口の減少によるコミュニティの崩壊、治安悪化、商業活動の衰退、物的環境の劣化、過度の車依存などをもたらした。建築と都市計画の両分野を統合し、ニューアーバニズムの旗手として名高い著者が公共交通指向開発(TOD)の導入により、持続可能なコミュニティを創出するためのガイドラインを詳細に解説する。広域都市計画、近隣地区開発のプロジェクトなどの実践例も紹介。20世紀の近代都市計画の反省を踏まえ、数多くの都市問題を明らかにしたうえで、新しい都市づくりのモデルを提示している。