日本で実践するバウビオロギー


書 評
『建築士』((社)日本建築士会連合会)2006.12
 “バウビオロギー”を見て直ぐに分かる人は少ないと思う。バウがあるから建築でドイツ語らしい、と気がつくのがせいぜいであろう。ビオは生命、学問のロゴスと合せたドイツ語の造語で「建築生物学・生態学」という新しい学問である。
 この本は、ドイツでベストセラーになった「健康な住まいへの道」を日本でも実践しようとする「日本バウビオロギー研究会」のメンバーによる本である。環境医学や、木を生かした自然派の家の実践例など、いろんな分野の人が分担した10章からなっている。
 中には、色彩やまちづくりまであるので、これがどうして「バウビオロギー」なのかと不思議に思ってしまった。それは、身体を第一の皮膚とすると、第二の皮膚とみなす衣服があり、その延長上に、第三の皮膚としての住まいがある。さらにその外に、まちや地球や空気までも含む第四の皮膚で覆われている、というたいへん広い範囲の環境を扱っているからである。
 したがって、この本は、化学物質が少ない建材が健康住宅だというような、姑息な手段を薦める本では決してない。今までの環境や健康をうたった本と類似する点もあるが、一味も二味も違った新しい健康な住まいの本である。
 しかし、言葉は外国から来ても、わが国にはすでに立派な「バウビオロギー」の手本がある。それは日本の民家である。ドイツの著名なバウビオロギーの実践者は、「日本の民家はバウビオロギー建築そのものだ」といっている。
 むずかしい言葉にまどわされないで、しっかりと環境と健康な住まいを考えるための大切な本である。
(大海一雄)

『新建築住宅特集』((株)新建築社)2006.7
 バウビオロギーとは、建築(バウ)と生命(ビオ)、学問(ロゴス)から成る、ドイツ語の造語で、日本語では建築生物学・生態学などと訳されている。生態系と調和のとれた都市や建築をつくろうという理念をいかに実践するか、それが本書のテーマである。
 近代化以降にもたらされた、シックハウスなどの科学汚染、ダニ・カビなどの生物汚染への対処法、また都市レベルでの景観や環境問題など、取り扱っているテーマは幅広い。日本バウビオロギー研究会の発起人でもある石川恒夫氏、三井所清典氏、防垣和明氏など執筆陣も多彩である。研究成果や実例の図版も充実しているので、バウビオロギーの入門書といえる。