窓がわかる本
設計のアイデア32

はじめに


 窓は住宅を含むすべての建築において、その建築の外観を決定づける要素の一つである。そればかりでなく、室内環境をコントロールする重要な装置でもある。そうしたデザイン性と機能性などを両立させることは、専門家といえども、技術的に、やさしいことではない。それが建築のデザインにおいて最も難しいのが「窓のデザイン」であるといわれる所以である。

 窓、出入り口などの開口部は、採光、通風、景観などのために有効に機能しなければならない。光や心地よい風が入ってくるのは歓迎だが、悪い空気は排出しなければならない。美しい景色を眺めたいが、逆に外から覗かれる心配もある。また、大きな開口は心地よい陽光を室内に導いてくれるが、反面、暖冷房の負荷となる面もある。このように、開口部はある一つの状況を満たせばよいものでなく、相反する条件を満たさねばならない。

 視野を広げてみると、国家や民族間の争いが多い時代や地域では、窓は防備性が優先されてきたし、害獣の侵入にも対処しなければならなかったろう。決してデザイン性や快適性だけで形づくられてきたのではない。

 この本は、窓や出入り口などの開口に焦点を当てて、その役割を再度見つめ直すことによって、居住空間がより快適になり、さらに自然と一体化した住環境のために窓の役割が大切であることを記したものである。アイデアの中には構造、法律などの制約によって実現できない場合もあると思うが、読者諸氏の生活を豊かにするヒントになれば幸いである。

中山繁信