窓がわかる本
設計のアイデア32

おわりに


 本書を書き終えて、あらためて窓というものが私たちの暮らしの中で、いかに大切なものであるかを再認識させられた次第である。

 最初に申し上げたとおり、建築において、窓や扉などの開口部は、一つの用途を満たすだけでは不十分で、相反する諸条件を一つの形態と単純な仕組みで対応しなければならない。さらに、建物の外観、内観を決定づける大きなデザインエレメントでもある。巨匠たちでさえ、窓のデザインは難しいのだから、私たちはなおさらである。

 ただ、「窓は建築の眼(まなこ)」というように、風や光を通すためだけでなく、近隣や街など社会との関わりを持つための大切なエレメントである。日本を訪れた外国の人々が、シャッターの付いた窓を見て「せっかく窓があるのに、閉めておいてはもったいない」「倉庫が並んでいるようで街並みが美しくない」という意見に、私たちは真摯に耳を傾けることも忘れてはならない。

 窓を通して各家の生活の気配が街にこぼれることによって、安心して歩ける街並みになる。セキュリティ、プライバシーを心配するあまり、シャッターや雨戸で「眼」を閉じてしまっては大切なものを見失うことになってしまいかねない。

 重ねて申し上げるが、本書の中のアイデアについても、様々な条件にすべて適応できるわけではないことは言うまでもない。一つのヒントと考えていただきたい。そして、読者の方々が、この著書を読んで、少しでも広い視点で「窓」の重要性を知ってもらうことができれば幸いである。

中山繁信