快適空間づくり 住宅設計のレッスン


あとがき

 住宅は身近なデザインの対象で、小住宅から大邸宅までその幅は広く、百家百様である。また、建築設計の入門としても最適で、比較的自由に設計できるのが特徴である。しかし、各地の町を眺めると、魅力あるデザインはきわめて少ないようだ。
  一つは設計サイドの美意識の薄さであり、もう一つは依頼者側の関心が機能面に偏り、デザインにまで及ばない点にある。
  この背景には、学校での住宅を含めた環境教育の希薄さにあり、さらには専門教育ですら、住宅デザインにかかわる時間が限られるなどの、いくつかの要因によると思われる。
  そこで少しでも多くの方に、デザインへの関心を高め、基本的な知識を持っていただければ、より魅力的な住宅づくりができるのではないかと思ってきた。以前から機会があれば、住宅の基本的な知識と身近な設計の仕方など「住宅設計の方法」について書ければと考えていた。
  このような矢先、工学院大学教授の中山繁信さんから学芸出版社の知念靖広さんを紹介され、この本が生まれることなった。
  少々大げさであるが、本のコンセプトは、住宅デザインに対する私の設計姿勢の表現でもある。具体的には、敷地の特徴を読み、住みやすい平面(間取り)、豊かな立体的室内の構成と魅力的な外観をつくることであり、一時の流行に惑わされず、少なくとも五〇年は住み続けられる住宅でありたいと願いながら書いたものである。
  本文での事例引用では、自作を中心に、著名な建築家の住宅作品をまじえたが、その選び方は、私の好みと独断によるものである。お許しいただきたい。
  この編集にあたり、学芸出版社の知念靖広さんには多岐にわたって指導を下さり、また、これまで自作品の多くを撮っていただいた写真家の畑亮さんには、写真掲載に関してご快諾を頂けた。この場を借りて御礼申し上げます。
  また、資料提供下さった工学院大学の谷口宗彦研究室と後藤治研究室、平面図をはじめ多くの図版制作に協力していただいた、同大学大学院修士課程の内藤功(2006年)、庭本卓実、大和篤志(2007年)の三君に心より感謝申し上げたい。

 

 2007年 夏
望 月 大 介