まちづくりの近未来


書 評



『地域開発』((財)地域開発センター) 2002.3
 20世紀後半のまちづくりは、WHOの提唱した「安全性」「保健性」「利便性」「快適性」の4つの目標をパラダイムとして多様な問題に対処してきたが、その一方で中心となる理念に欠いていた。21世紀前半のまちづくりも、「高齢化」「情報化」「国際化」「地方分権」という緊急の課題に直面する中で、未だに中心となる理念を欠くばかりか、新たなパラダイムすら見つけられないでいる。
 本書はフィジカルプランに偏った従来のアプローチに対する反省から、「人間性」という観点から今後重要となるキーワードを読み解き、その上で近未来のまちづくりのあり方を展望しようとする書である。本書の中では「人間性の荒廃」が現代社会の中心的な問題と位置付けられており、それを解決していくための「文化」「環境」「コミュニティ」「経済」を新たなパラダイムとする「人間賛歌のまちづくり」という理念、及びそれを支える新しいシステムが提唱されている。


『地方自治職員研修』(公職研) 2002.1
 20世紀後半、まちづくりのパラダイムは、WHOによる安全性、保健性、利便性、快適性であった。この物的な計画が主流となった20世紀的な理念を、人間性をテーマとするまちづくりへと変えていきたい。
 本書は、そんな思いを共にする実務者、研究者たちが著した、まちづくりの未来設計図である。パラダイム転換の上で重要となってくる九つのキーワードをもとに、中心市街地やニュータウンなど市街地のタイプ別に、新たなまちづくりの要素と、それを支えるシステムを考察する。


『人と国土21』((財)国土計画協会) 2002.1
 世紀の変わり目に際し、まちづくりについても、物的な計画が主流となった20世紀のパラダイムから、人間性をテーマとするまちづくりへと、その変革が求められている。こうした認識のもと、『まちづくりキーワード事典』をまとめた中心メンバーが再び集まり、近未来のキーワードを軸に「人間讃歌のまちづくり」を提案する。
 1章ではまちづくりの新たな理念と目標を、2章では「コンサベーション」「ユニバーサルデザイン」などのキーワードを、3章では中心市街地やニュータウン等、市街地別に見通される近未来像を、4章では「コンビニ」「老人力」「空き家」など今後重要となる要素を、そして5章では専門家の育成やコラボレーション等、まちづくりの近未来を支えるシステムを論ずる。
 タイトルに「近未来」とあるように、本書に取り上げられたテーマは遠い将来のことではなく、今既に始まりつつある動きと、その数歩先に見えている社会やコミュニティの在り様を示唆するものであり、用語集として参照するのみならず、まちづくり実践の手引き書としても活用することができよう。
(畑めぐみ)


『造景』(建築思潮研究所) No.34
 本書は、同じ出版社で上梓した『まちづくりキーワード事典』の執筆陣によって書かれたものである。基本的には前著の「近未来編」といえるもの。
 まちづくりの未来をまとめることは、著者が前文で告白しているように、かなり難しい。本書のように多数の執筆者が関わっている場合は、なおさらである。しかし現在、これほど必要とされている事柄も少ないであろう。
 なぜなら、今日は従来の都市計画の手法がほとんど完膚無きまでに無力化している時代だからである。個々の手法の修正ではもはや対応できない。全く新しい都市像が求められている。
 どのような都市を目指すのかを十分な議論によって定め、しかる後に個別的な問題に当たらないと、結局は前世紀的な都市開発の焼き直しになってしまう。本書がそうした議論のきっかけになることを望む。


月刊『ガバナンス』(鰍ャょうせい) 2001.10
 21世紀のまちづくりのパラダイムとはどのようなものなのだろうか。本書の執筆者である若きプランナーたちは、その未来像として、人間に焦点を当て「人間讃歌のまちづくり」を理念として、「文化」「環境」「経済」「コミュニティ」を柱としたパラダイムを提案する。近未来のまちづくりの重要なキーワードと市街地のかかえる問題解決に様々なアイディア、そしてまちづくりを支えるシステムなど、指針となるまちづくり本である。



  • もくじ
  • 著者紹介
  • はじめに
  • メインページ

    学芸ホーム頁に戻る