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協働のデザイン




おわりに




 本書は、前著『市民参加のデザイン』(ぎょうせい、1999年1月)に続く、私の思索と実践活動報告の第2弾である。
 『市民参加のデザイン』は私自身の十数年に及ぶ活動の実績とその間に組み立ててきた「参加のデザイン」という理論をまとめたものであった。それまでの市民参加の議論は行政がレールを敷いた状況にどのように市民を参加させるか、市民の側もどのように行政に参加するか、といった行政主導の市民参加を想定しがちであったのに対して、『市民参加のデザイン』は市民を新しい公共を拓く主体者として位置づけ、市民が新しい公共の創造にむけてどのように参加するか、真の市民参加とは何かを各地での実践事例を核にして書いたものである。

 本書『協働のデザイン』は、『市民参加のデザイン』が個人の参加に焦点をあてているのに対して、NPOと行政、企業等の異なるセクターや組織同士の真の協働のあり方、協働関係づくり、組織と組織の参加のデザインをNPOの視点から書いたものである。

 協働のデザインの中心的な課題はパートナーシップによるネットワーキングのあり方といってもよい。NPOを核としたネットワーキングの課題は大きく分けて4つある。本書の縦糸が「はじめに」で述べた5つの課題であるとすればこの4つは横糸である。

 第一番目は、静的なネットワークから動的なネットワーキングへということである。
 知り合い、つながりがあるというだけでは市民社会の問題や課題解決にはつながらない。
 一足す一が三や四という成果をうみだすためには、プロジェクト創造型の動的なネットワーキングが不可欠である。ではネットワーキングできるネットワークをつくるにはどうしたらいいのか。それが第一番目の課題である。
 第二番目の課題は、組織内のネットワーキングである。組織の活性化といってもいい。
 第三番目は、NPO間のネットワーキングの必要性である。
 行政の縦割りの弊害がよくいわれるが、NPOも行政の縦割りにリンクして活動分野や領域ごとの縦割りに陥りがちである。例えば福祉の分野の人は福祉の分野の人同士のネットワークはあるが、国際交流やまちづくりといった他の分野の人々とのネットワークは少ないし、たとえネットワークはあってもネットワーキングしてプロジェクトを創造、実施するといった例は本当に少ない。
 第四番目は、NPOと他のセクターのネットワーキングの必要性である。
 NPOと行政、NPOと企業といった他のセクターとの協働、ネットワーキングは多様で多元的な市民のニーズに答える社会サービスの創造には不可欠のものである。
 そのためにはそれぞれの特性と力量に応じた役割分担と協働のためのデザインが必要である。そういう意味では本書で紹介した「評価システム研究会」はNPO間および地域、セクターを越えたネットワーキングのよい事例だと自負している。


 縦糸と横糸をうまく紡げたかどうか、読者の評価に待ちたいが、本書の執筆には、学芸出版社の前田さん、知念さん、特定非営利活動法人NPO研修・情報センターの事務局の森田さん、本田さん、川上君、フェローシップスタッフの吉見さん、娘の有佳里をはじめ、行政とNPOの協働のプロジェクトをいっしょにやってきた高松市や蒲原町の方々等、多くの人々の協力の賜物だと思う。心からの感謝を申し上げたい。

 本書が多くの方の共感を得るとともに、参加、協働型市民社会の構築に役に立てればなによりの幸いです。

 本書の感想、意見など是非FAX、メール等でお寄せください。
2001年1月 世古一穂



もくじ
序にかえて
著者略歴
書  評



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