パートナーシップとローカリゼーション
『地域開発』((財)日本地域開発センター)2006.9
著者は持続可能な地域づくりの活動原則として、社会を構成する様々な主体が活動の各段階に関わるパートナーシップと、人・もの・金が世界規模に動くグローバリゼーションに対し、地域の中にある資源を活用するローカリゼーションの二つのキーワードを挙げている。
本書は、英国におけるパートナーシップとローカリゼーションを活用した地域再生の取り組み事例を紹介し、これらの事例を通じて日本における持続可能な地域再生のあり方を展望しようとする書である。前者のパートナーシップの取り組みの例としてはブリストルの衰退地域において30年余にわたって行われているコミュニティ再生事業の活動が、後者のローカリゼーションの例としてはパーマカルチャーやナショナルトラストの取り組みが取り上げられている。さらに両者の性格を併せ持つ持続可能な地域づくりの例として、地域戦略パートナーシップやソーシャルエコノミー等の事例が紹介されている。
『環境緑化新聞』 2005. 8. 1
本書で紹介されている持続可能な地域づくりは、著者の1999年7月から2年間の英国留学調査体験がベースになっている。副題は「パートナーシップとローカリゼーション」。行政主導ではなくコミュニティ主体のパートナーシップ。そして地域の自然資源、知恵・技術・お金を活用して地域の中で循環させるローカリゼーション。これは農産物の地産地消や地域内の資源を利用した自然エネルギーの供給といった例だ。これらの活動の経済主体をソーシャルエコノミーと名づけ具体的事例を紹介する。協働と自立・地域内循環による環境と社会・経済の一体的な地域再生を語る入門書だ。
問題は、これらの事例がわが国で導入可能なのか、という点。福岡正信氏の自然農の理念、桜沢如一氏のマクロビオテック料理法が掲げる身土不二の理念を挙げ「ローカリゼーションは、海外からの概念の輸入ではなく、日本固有の理念、原則である」とも紹介している。つまり、日本の古来の社会は地域内資源循環型社会を構成していた。わが国にも英国同様、再生は可能ということを説く。 |
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