「全国重文民家の集い」を結成し、四半世紀が過ぎた。この間、多くの個人所有者の世代が代わり、重文民家をとりまく環境も大きく変化して、社会が重文民家を見る目が変わってきた。つまり、重文民家は所有者だけのものではなく、社会全体のものであるとの意識が生じてきて、それに伴う社会と重文民家所有者との間に認識のずれが生じてくるようになってきた。このため、一層の共通認識を構築することが社会と重文民家所有者の双方に、必要になってきている。このような状況下では、とりわけ所有者側からの情報発信が、これまでにも増して不可欠である。
このため「全国重文民家の集い」では、インターネットにホームページを立ち上げるとともに、平成十三年には公開シンポジウム「二十一世紀の古民家を考える―その保存の意義と活用について」を開催した。
一方、「全国重文民家の集い」で年一回発行している機関紙「梁<うつばり>」には、個人所有者たちの赤裸々な想いが綴られている。
本書の執筆に当って、編集委員会では公開シンポジウムで議論された内容と、「梁」の記事を直接に、またもとにして大幅に書きかえ、重文民家の歩みと所有者の率直な思いを取りまとめた。しかし、本書の構成上、所有者個々人の想いを必ずしもすべて言いあらわし得ていないこと、および複数の執筆であることからくる多少の文体上の不統一があることをお許し願いたい。これらについての責任はすべて編集委員会が負うものである。
「民家保存の流れ」をご執筆頂いた鈴木嘉吉氏、文化財保護行政の立場から「重文民家の保存をめぐる今日的問題」についてご執筆頂いた亀井伸雄氏に厚くお礼申し上げる。また、「全国重文民家の集い」会員からは、過去の「梁」の記事に加え、さらに新しい情報や写真を提供頂いたことを記して感謝する。本書の出版事業に多大の助成を頂いた、公益法人大成建設自然・歴史環境基金に対し深く謝意を表する。
末尾ながら、本書の出版をお引き受け頂いた滑w芸出版社の京極迪宏社長、前田裕資取締役ならびに、編集ディスカッションの当初からアドバイスを頂き、多大の労をおかけした同社編集部の永井美保氏に心からお礼申し上げる。
平成十五年四月編集委員会代表 行永壽二郎
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