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マンション管理組合テキスト




おわりに



 住生活研究所が発足して十年を迎えるたその年に阪神大震災が発生した。混乱と秩序、対立と和解、絶望と希望、私憤と公憤、独裁と民主……、阪神間のマンションの復興に向けてのマンション居住者のさまざまな動きのなかで、私たちはマンション居住者が、自分たちのマンションに対する管理とコミュニティに対して不断に関心をもつことの重要さを改めて確信した。資産価値にとらわれ、そこにあった生活を無視した建替が強行されようとする現実は重い。
 住生活研究所が事務局が預かっている京滋マンション管理対策協議会(管対協)も発足から十五年を経て、各加盟マンションの管理組合の成長は著しい。それに応じて住生活研究所、管対協も各管理組合に対する啓蒙・教育的機能だけでなく、さらに積極的な役割が求められている。
 そのひとつが管理組合役員を対象とした管理のプロの養成だ。もうひとつはマンションの管理組合が単に受け身的な消費者である段階をこえて、我が国の経済社会のなかで大きな社会的存在となりつつあるという現実のもとで、その役割の可能性についてさまざまな実験を試みていくことだ。
 本書は単に啓蒙・教育的なテキストブックではなく、そのような意識を前提として管理組合は建物の管理を目的とする団体であるという従来の型どおりの発想を捨てて、これまでの試行錯誤の成果を整理し、かつ今後の方向付けを明確にすることを狙いとしている。この出版を機会に、プロ養成をめざすマンション・スクールと市民向けのマンション・セミナーを発足させる予定である。
 市民活動を推進するいわゆるNPO法案が準備される時代になったが、NPOを地でいく私たちの研究所の活動を振り返ってみると、よくぞここまでといった思いにかられなくもない。しかし、差し迫った課題ばかりが現われて十分に手がまわらない、というのが正直な気持ちだ。そして、運営していく財政が厳しい。
 このようななかで活動を継続できたのは専従スタッフの献身的な支えがあったからである。とりわけ、設立以来一貫して、事務局長として研究所を切り盛りしてきた谷垣千秋の力量に負うところ大である。
 本年四月に開催される日本マンション学会までに出版しようという時間の制約上、果たして本書を計画した当初の狙いが達成できたかどうか心もとないが、私どもに共感していつも応援していただいている学芸出版社の京極〓宏氏、怠惰な私たちを叱咤激励していただいた編集部の藤谷充代氏、宮本裕美氏に心からお礼を申し上げたい。
 実のところ、マンションの新しい本を出しませんか、と仕掛けたのは藤谷さんからであった。昨年の夏に出版した『甦る都市』の編集の打ち合わせも終わりにさしかかったころだ。私たちの活動がこのようなかたちで日の目を見るのは、理解ある出版社のおかげである。改めて感謝する次第である。
  一九九六年春
住生活研究所常務理事 折田康宏



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