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古地図にみる東南アジア




序文



Images of Asiaシリーズ刊行にあたって
 オックスフォード大学出版局の刊行になる叢書「イメージ・オブ・アジア」は東南アジアを中心にアジア各地の歴史、文化、生活を紹介する入門シリーズで、発行点数はこれまでに30点を超えている。扱う題材も東南アジアの果物や楽器からインドネシアのバティック、タイの仏像まで幅広い。
 本邦訳シリーズでは、主として都市・建築に分野を絞り、アジア都市の歴史とその住まいの特質を各地の文化的背景や歴史的文脈のなかで読者に分かりやすく紹介することを目的としている。
 今回、第1期として「東南アジアの住まい」、「マレー人の住まい」「バンコクの歩み」、「マカオの歩み」、「古地図にみる東南アジア」の5点を上梓する。
 現在、アジアの多くの国々は飛躍的な経済成長のただ中にあり、都市構造から生活様式まで多方面にわたる急激な変化にみまわれている。そのなかでそれぞれの地域に固有な伝統的住居や建築儀礼、歴史都市の景観が日に日に失われつつあることが懸念されている。
 表層の変化の基底には、しかしながら、アジア固有の空間感覚がいまもって失われておらず、多様な生活文化が息づいていることも事実である。
 こうした歴史や伝統をもう一度振り返るなかから変貌する都市の内部に固有の文化に根ざした新しい伝統が生まれ、豊饒な生活空間が再生されてゆくべきであるということはアジア都市共通の課題である。
 本シリーズが急激な変貌をとげつつあるアジア社会の基底にひそむ文化の多様性と普遍性とを理解する一助となり、構築されるべき新しい建築文化・都市文化の枠組み作りにわずかながらも役立つことを願わずにはいられない。
 なお、鑑修にあたっては全編にわたって訳文を検討し正確を期したほか、訳語や表記の統一をはかったが、思わぬ誤りも免れないに違いない。諸賢の御批判、御叱正をいただければ幸いである。
1993年3月
西村 幸夫

序文

 東南アジアにとくに興味をもつ者として、また熱心なアマチュアの古地図の収集家として、私はこの本を準備することにより、これらの二つの熱狂を同時に満足させる機会に恵まれました。古地図は、装飾された歴史的な記録です。それらを収集にかかる費用もそれほど膨大でもなく、金持ちだけのための趣味というわけでもありません。
 たとえばこの本に収録した図版は、東南アジアの古地図、海図、スケッチや平面図などの全体像を示すために慎重に選択されたものですが、それらの大半はこれからの収集家にとって現在でも手頃な価格で入手することができます。
 東南アジアにおける地図作成の歴史は、多くの国々の永年にわたる冒険と多大な努力の物語です。私は対象をヨーロッパの地図制作者の仕事に限り、なるべく公平になるように選択を行いました。しかし他にも中国人や日本人などのなかにも注目に値する地図制作者がいたことを忘れてはなりません。それらの地図は貴重なものであり、専門家によって別に一冊本として出版されるに値するものです。
 私自身、この本のための調査を通して多くのことを学びました。さらに深く学びたいという読者のために、巻末に「参考文献」として数冊の専門書を提示しておきました。とくに、地図制作者に関する知識に大きく貢献した本としてカルロス・キリーノの権威あるPhilippine Cartographyとともに、故R.V.トーレイの本を挙げておきたいと思います。これらの本なしには、この本の出版は不可能だったでしょう。さらに、この本の準備のためにいろいろと援助していただいた博物館や図書館、地図販売業の方々に心より感謝を捧げます。また、妻にその寛容さと原稿準備の手伝いに対して感謝します。
 この新しい版のために、私はいくつかの必要な訂正とともに新しい資料と地図を加えて、本の一部を改訂しました。


もくじ
あとがき
著者略歴



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