Gロゴ

マンション管理とメンテナンス




まえがき



 このごろのマンションの管理組合が大変面白くなってきました。ほんの二、三年前までは、一部の熱心な人たちの集まりでしかなかったり、分譲会社や管理会社への告発色の強かったマンションでも、将来へ向けて、随分と開かれた運営が試みられるようになっています。また、今までは、管理組合の運営、メンテナンス(維持・修繕)、コミュニティづくりというマンション生活を支える三つの大きな柱が、それぞれ単独に論じられがちでした。実際にも、別々の方向から運営されてきた傾向がありましたが、ここにきて、それら三つの柱をこれから先の長い住みこなしを軸にして、もっと有機的に、生き生きとした関係で展開してゆこうとする試みが一部の管理組合に芽ばえてきました。これは分譲会社が用意してくれたものでも、管理会社から教わったものでもありません。マンションに生活する人たちが、それぞれのマンションで同時多発的に自分たちで気づき始めたことです。  私は二年前にマンションのメンテナンスに関してこの本をまとめましたが、その時には、この機運がまだ十分ではありませんでした。それ以来、ずっとこのことが気がかりでしたが、最近、いろいろなマンションで、はっとすることに出合うようになりました。そこで、今度は管理組合の運営を中心にしてマンション生活を考えてみたくなりました。私にこの本を書くきっかけを与えてくれたそれらの事例は、本文の間に「ケース・スタディ」としておさめてあります。初めて管理組合の役員になられた方は、本文にとらわれず「ケース・スタディ」だけを拾い読みするとよいかもしれません。そこから、自分なりにマンション生活を考えて見るのも面白いでしょう。
 管理組合が十分に活躍していなかったり、まだ管理組合をつくっていないマンションでは、この本を読んでちょっとばかりは焦ってほしいと正直なとこ思っています。そして、何かヒントを見つけてほしいと思います。そうすれば、またそこで一つの新しい試みが始まり、管理組合の和が広がります。
 目を移して、新しいマンションを見ると、日々、新しいアイディア、斬新な設備をつけたマンションが新聞の広告をにぎわしています。ちょうど、まだ十分に走れる車をそろそろ新車にしなければ、と思うのと同じように気もそぞろにさせられなくもありません。次第に、住宅もイメージ商品と同じ様相を持ってきました。しかし、この点については、何も焦ることはありません。住宅にとっては、分譲会社が考える目新しいアイディアや装置よりも、住み継ぐことによって生まれるてくるものの方がずっと大切です。日々、住み継ぐことで育てられゆくものの重さややさしさは、どんな目新しいアイディアや装置にもかなわない。というのが、日ごろ住宅の設計を専門としている私の立場です。良い設計は、上手に住みこなされていくための仕掛けをしてゆくことでもありますが、古いマンションほど、実際にそんな仕掛けが少ないかもしれません。しかし、管理組合の運営によっては、住みこなしの中にいろいろな可能性が見えてきそうです。この本から、そんな時のヒントが一つもみつかれば幸いです。
著者



もくじ
あとがき
著者略歴



メインページへ

学芸出版社/gakugei

| 図書目録ページへ | 学芸出版社ホームへ |