1章 自動車に依存する郊外居住の行き詰まり:アメリカンドリームの終焉
自動車に依存する郊外の拡大/郊外住宅地の膨大な交通貧困層/避けるべき低密度開発/富裕な住宅地の資産価値防衛/相次ぐ住宅地の放棄/富裕階層優遇の住宅税制/中心都市に住まざるを得ない人々/日本への教訓
2章 公営高層住宅の荒廃:米国
高級高層住宅は安泰/公営高層住宅における犯罪の激増/ニューヨーク市営住宅の犯罪実態/シカゴ市営高層団地の場合/公営団地の社会特性/わが国でも空き住戸は問題/わが国でも必要な緊急対策
3章 高層住宅建設の反省:ボストンの場合
ボストン市営団地の欠陥/高層住宅環境の緊急的改善/居住者による自主管理を誘導/わが国でもあいまいな共同エリアの管理/自主管理への移行/屋外空間の割当と犯罪防止の関係/共用グループの規模と共同利益の有無がカギ/遊び場の段階構成/敷地の入口を絞る/幾重もの「防衛線」をつくる/住環境の自主管理の広範な意義
4章 成功した高齢者向けリニューアル:スターレットシティとソーヤー・タワー
厳重な入居者選考でよみがえる高層団地/乏しい空間的防犯配慮/警備員のパトロール/人種割当制度/厳格な入居者選考/オハイオ州コロンバスー1982年/充実した保安設備/リニューアル成功の要因/わが国にも必要な高齢者向けリニューアル
5章 オスカー・ニューマンの提案:ニューアーク・モデル
オスカー・ニューマンの住み分け提案とその評価/ニューアーク・モデル・設計条件/開発コンセプト/園地を割り当てる/高齢者向け住棟の設計コンセプト/付き合いを促すホール型通路/幼児のいる家族には中低層住宅/囲み型配置に対する反論・反反論/ライフステージ別の住み分け/ミックス開発の利点
6章 新世代マンション・その1:デアボーン・パーク
ニューアーク・モデルの実像/デアボーン・パークの概要/小世帯向け中層住棟/都心回帰の理由/超高層住棟とその住戸配分/住棟平面と分譲価格/賦課金/わが国でも都心勤務の共働き世帯は超高層がお好き/家族向けのタウンハウス/郊外居住世帯を引きつける工夫/市場から見たタウンハウス/砦型コミュニティの可否
7章 新世代マンション・その2:クラソン・ポイント・ガーデン
自主管理でよみがえる/改造のための仮説と調査/改造設計の概要/居住者の自主管理意識の増大/団地犯罪の減少/中央広場の改造/住棟外壁の居住者参加による塗装/近代建築運動の迷い道
8章 幼児のいる家族を高層住宅から転居させる:イギリスの政策
イギリスの高層住宅ブームとその終焉/近代建築運動の巨匠による高層住宅の推進/都市農村計画協会の活躍/高密度再開発反対の勝利/ピーター・セルフの高層住宅批判/労働党政府による密度制限/チャイルド・ロビーの活躍/高層空間の子どもは屋外遊びが少ない/高層住宅から幼児のいる家族を転居させる行政措置/幼児のいる家族向け高層住宅環境の終焉/官民協同による防犯改装
9章 ワーデンのいる高齢者住宅へ:イギリス公営住宅の転換
「空中街路」イメージの高層住宅の失敗/コーポ住宅への切替え/シェルタード・ハウジングへの改造/ワーデンの常駐/住宅管理重視のポリシー/シェルタード・ハウジングへの改造の動機/住棟改造の実際/用途変換のコストと手続き/英国の経験からの教訓
10章 ル・コルビュジェのアントワープ計画:実現と失敗:オランダの教訓
アントワープ計画を受け継いだバイルミールの空間特性/バイルミールの社会特性/犯罪・落書き・ヴァンダリズムの都市/歴史的失敗からの教訓/既存の高層住宅改善策/バイルミールからガースパーダムへ/ル・コルビュジェと訣別したガースパーダム
11章 ボンネルフのあるコンパクト・シティ:アムステルヴィーン
都市計画ポリシーの転換/職住近接型・公共交通優先型の都市構造へ/集合住宅への戸建住宅の質の組み込み/ボンネルフとその導入/ボンネルフの要件とは
12章 防犯デザインの限界:セント・フランシス・スクエア
防犯設計の模範/空間的防犯性能/ボンネルフ以前のボンネルフ/育児にとって有難いコモンヤード/ある環境デザイン学者の居住体験/問題のある避難階段/防犯性は空間設計だけでは不十分
13章 研究成果からヒューマン設計へ:フォルズクリーク団地
環境と社会性に配慮した再開発/所得・年齢ミックスの決定経過/計画コンセプトへの翻訳/社会階層の多様化と同質化の両立/ソーシャルミックスは達成されたか/住環境ニーズの形態言語への翻訳/形態言語による開発指針/住棟のマクロな計画指針/住棟のミクロな形態指針/コモンヤードの設計指針/駐車エリアと公共輸送サービス/入居後評価調査の結果
付録 高層住宅のチェックポイント30
A:住宅計画/B:住戸設計/C:住棟設計/D:屋外設計/E:配置計画/F:管理方針
解題
おわりに