人と地域をつなぐ グリーン・ツーリズム

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 京都には昔から、「京に田舎あり」という言葉があります。21ふるさと京都塾では、1990年に「21世紀村づくり塾運動」と取り組むにあたって、このあとに「田舎に京あり」を続け、「京に田舎あり、田舎に京あり」として「ふるさとづくり塾運動」を進めてきました。都市と農村との新たな協力関係をつくりだすことを抜きに、農村だけのむらづくり運動では成功しないと考えたからです。

 ところで、いま「グリーン・ツーリズム」は、中山間地対策の重要な柱として脚光を浴びています。私どもが運動をはじめた当時は想定しておりませんでしたが、いま思えば、私どもの合言葉「京に田舎あり、田舎に京あり」は、グリーン・ツーリズムのさきがけ的表現であり、その理念に照らしても、なかなか含蓄のあるものだと思っています。

 このグリーン・ツーリズムという言葉は、正直言って、まだ身に添いにくい面があります。言葉の定義もまちまちで、概念的にもまだ整理されているとはいえません。しかし私どもは、単なる田舎や自然への旅ではなく、農村の人と都市の人の心がひとつになってふれあう交流がその基礎にないと、本来のそれではないと考えています。ここに塾運動と一脈通じるものがあるわけです。

 それが証拠に、言葉の表現はどうあれ、今、新しい都市と農村のかけはしづくりの実践がはじまっています。たとえば、塾運動のなかで、地域に愛着と誇りをもち、自らの暮らしの場を立て直そうとする「元気な人たち」が現れ、都市の人たちを意識した農産加工品づくりや、朝市が取り組まれています。また、農村の景観や暮らしの環境を美しくする取り組みもすすみ、農村の中にもグリーン・ツーリズムの受け皿づくりが芽ばえています。また、都市の人々との絆を強める、交流の輪も広がってきています。

 本書は、こうした動きをみつめながら、塾運動発展のひとつの手法としてグリーン・ツーリズムを重視し、これを広げていこうとの思いから発刊することにしました。

 本書に類する書物は近年数多くでていますが、むらづくり運動の観点からこれをとりあげ、掘り下げたのは私どもが初めてではないかと自負しています。私どもとしては、これを出発点に、さらに塾運動の中でその成果を試し、先進事例からも学んで、一層、実のあるグリーン・ツーリズムに仕上げていきたいと念じています。

 本書が、府内はもちろんのこと、グリーン・ツーリズムに取り組まれる全国の塾関係者の方々に活用されることを願ってやみません。

〈文:21ふるさと京都塾塾長 菊地泰次〉


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学芸出版社『人と地域をいかす グリーン・ツーリズム』

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