都市再生の都市デザイン

書評


『地方自治職員研修』(公職研) 2001.10
 景観形成と並び、否それ以上に、都市づくりの上で大きな課題である空間構成(都市デザイン)。しかし、「都市の表層を整える」にとどまる前者に比べ、より根元的な取り組みが必要とされる後者はこれまで十分になされてきたとはいえない。本書は、都市づくりの構想、計画づくりから諸施設の設計、工事監理にいたるプロセスに沿って、空間構成をいかになすか、その技法を体系化し、また現在の制度・手法の問題点を指摘、新たな都市デザインのあり方を提言している。


『地域開発』((財)日本地域開発センター) 2001.10
 一定水準の都市整備が済んだ今、より良い都市空間を作り出そうとする中で、景観だけでなく、人々の活動まで含めた都市のデザインはますます重要になってきている。
 本書は、都市開発プロジェクトを基本構想段階、基本計画段階、設計段階、工事監理段階に分け、各段階における都市デザインの具体的な取り組みを実際の流れにそって整理し、そこでのデザインの考え方、配慮すべき点、それを実現させるための事業上の方策等を体系的にまとめている。また、著者が実際に携わった帯広駅周辺、花巻駅周辺、丸亀駅前、旭川市の4つのプロジェクトでの代替案の検討や、様々な活動の想定など、その空間がどのような意図・背景の元に検討され、構成されたのかという空間の生い立ちが紹介されている。
 著者が指摘するように、現在は空間構成まで含めた都市デザインの取り組みが必ずしも多くないが、本書は今後都市デザイナーとして都市再生に取り組む人々の参考になるだろう。


『造景』(建築思潮研究所) No.33
 中心市街地活性化における開発事業プロジェクトをはじめ、様々な都市開発事業の過程で、関連する様々な主体が都市デザインに一貫して取り組み、魅力ある空間づくりを成功させるにはどうすれば良いか。
 本書では、魅力的な都市空間づくりのために、これまで各地で行われてきたプロセスや技法の紹介がされている。主に対象は中心市街地をはじめとする再開発事業。
 専門家による都市づくりの構想、計画づくりから諸施設の設計、工事監理に至るまでの各プロセスにおける、取り組みの技法、展開の過程を体系化、関係者で共有し、造り出そうとする空間を実現していくための制度や手法を充分に理解し活用していけるようにまとめられた。
 著者が研究を重ねてきた各地での事例や自らの実務経験を読者に伝え、これからの都市デザインに貢献してほしいという願いからとりまとめられたもの。都市計画を担ってきた第一線の研究者からこれから同じ問題に体面するであろう後輩への教書と言えるだろう。


『建築士事務所』((社)日本建築士事務所協会連合会) 2001.6
 長期にわたる都市開発事業の過程で、関連するさまざまな主体が都市デザインに一貫して取り組み、魅力ある空間づくりをするためにはどうすればよいのか。道路や建物の空間構成、骨格的な景観形成も含めた都市デザイン実現の方策を示す。
 都市づくりにおいて積極的に都市デザインと取り組む必要性は言うまでもない。都市デザインとは何なのか、その重要性を理解するところから始まり、具体的な4つの事例(帯広駅周辺地区・花巻駅周辺地区・丸亀駅前広場周辺地区・旭川市都市拠点地区)を通してその技法に迫る。


『新建築住宅特集』(叶V建築社) 2001.6
 本書は著者が東京大学に博士論文として提出した「都市開発プロジェクトにおける都市デザインの技法と実現手段」を、より簡潔にまとめたものであるという。都市開発という長期のプロジェクトでは、そのデザイン展開の体系を明確にしておかないと意図したものとまったく違ったものになってしまい、収拾がつかないはめに陥るだろう。本書では、都市環境デザイナーが果たすべき役割とは何かを探り、プロジェクトの各段階において取り組むべき都市デザインの内容やその技法、また各取り組みを実現していくための具体的な方法を紹介している。表層のデザインではなく、空間構成や骨格的な景観形成も含めた都市デザインへの入門書。


学芸出版社
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