まちづくりの法律がわかる本


はじめに

 今やソフトな意味での「まちづくり」という言葉は定着していますが、都市計画法や建築基準法、土地区画整理法や都市再開発法、近時は都市再生特別措置法や国家戦略特区法、さらに東日本大震災後に次々と制定された復興法制と災害法制、そして国土強靭化基本法、首都直下地震法、南海トラフ地震法等々、200本以上に上る膨大なまちづくりに関する法律は理解するのが大変です。歴史的に考えても戦前のまちづくり法はともかく、「もはや戦後ではない」と言われた昭和37年以降の高度経済成長政策の中で近代都市法が確立しましたが、石油ショック、土地バブルとその崩壊、リーマンショック等の大波乱と阪神・淡路大震災、東日本大震災等の大災害の中、自民党を中心とした歴代内閣はさまざまな都市政策を展開し、まちづくり法は大きく変遷してきました。そして急速な少子高齢化が進む2017年の今、日本のまちづくり法は大きな転換期を迎えています。
 都市計画法を学生時代に勉強した人は少なく、社会に巣立った後に必要に迫られて勉強する人がほとんどです。その典型は自分の敷地に家を建てるケースで、そこではじめて用途地域と用途規制・形態規制を知り、市街化区域と市街化調整区域の線引きや開発許可の意味を考えることになります。他方、時代が大きく変遷する中で「メニュー追加方式」によってチンプンカンプン状態になっている条文もたくさんあります。しかし、何事も基本が大切、原理原則の理解が大切です。「都市計画とは何か?」を出発点とした都市計画法の理解ができれば、まちづくり法体系の理解も可能だし、現在の到達点と今後の課題を明確にすることもできます。本書は、各項目ごとにエッセンスを抽出してわかりやすく解説していますので、一方ではその方面の専門家の論点整理用として、他方ではまちづくりの初心者の入門書として活用していただければ幸いです。

弁護士 坂和章平