エネルギーの世界を変える。22人の仕事
事業・政策・研究の先駆者たち



はじめに


 この本は、2014年3月に発足した「若手再エネ実践者研究会」を母体として生まれた。
 「自然エネルギー」と「地域」という視点を共有する若い人々が結集するこの研究会に、私も46歳にして“最高齢者”として関わることになるとは思ってもみなかった。しかしこれは、それだけ自然エネルギーの世界に、若く魅力的な人々が次々と身を投じていることの反映でもある。
 この世界は急速に変わりつつある。特に日本は、2011年3月11日の東日本大震災の発生と福島第一原子力発電所の事故(3・11)をきっかけとして、急速な変化に直面している。百年一日のごとくだったエネルギーの世界も、「再生可能エネルギー固定価格買取(FIT)制度」の導入と「電力・ガスシステム改革」によって、大きく変貌を遂げようとしている。この変化は不可逆的であり、日本も間違いなく20世紀型の「集中型電力システム(大型火力、水力、原子力発電)」から21世紀型の「分散型電力システム(ガスや燃料電池、太陽光、風力発電)」への移行が始まり、そのなかで、太陽光、風力、バイオマス、地熱、小水力発電といった自然エネルギーは、基幹電源の一角を占めるようになるだろう。すなわち、エネルギーの世界における地殻変動が始まったのだ。
 本書に登場する執筆陣は、こうした変化に積極的に身を投じた人々でもある。読み進めると、 3・11に抱いた思いを大切にもち続け、実践に移し、直面する課題を「寄らば大樹の陰」ではなく、旺盛な独立精神とベンチャー精神で乗り越えようとしている共通点に気づく。自然エネルギーという「未踏の地」を手探りで進んでいくことの怖さ、失敗の経験とその教訓、達成の喜びと充実感を、著者たちの息づかいとともに追体験できる。試行錯誤を繰り返すなかでも「気づき」があり、それが大手企業にはないビジネスモデルの創出につながったことも記されている。
 解決すべきチャレンジングな課題が眼前に広がっており、きわめてやりがいのあるエキサイティングなこの世界に身を投じることは、「人生を生きる」ことそのものだと言っても過言ではない。
 自然エネルギーに関心を持つ人はもちろんのこと、農山村を中心とする地域再生に関心をもつ方々や、エネルギーへの関心の有無にかかわらず、そもそもこれから自分はどのようなキャリアを積んでいけばよいのかと日々考えている学生の皆さん、すでに企業で働いているけれども、はたしてこれでよいのかと迷いの生じているサラリーマンの方々、さらには、この世界を自分が変えつつあると実感できる手応えのある仕事がしたい、との意欲に燃えるあらゆる方々の手に、本書を届けたい。

2015年3月 諸富徹