ハードワーク! グッドライフ!
新しい働き方に挑戦するための6つの対話


働き方が問われている

 毎日きれいなオフィスに通って、たくさんの人に囲まれて仕事をしているけれど、このままの働き方でいいのか。目の前の仕事が、果たして本当に自分のやりたいことなのか──。
 そんな漠然とした疑問を持って毎日を過ごしている方は、意外に多いだろう。最近よく、「誰かのためになる仕事がしたい」「給料のためではなく、大切な価値を生み出す『何か』のために働きたい」「人生を消耗させるためではなく、人生を豊かにするために働きたい」といった声を耳にする。
 「はたらく」という言葉は「傍を楽にする」という意味を含んでいるという説がある。気の利いたシャレである。僕はこの説が好きだ。誰かを楽にする、楽しくすることが働くことであり、そこに対価が発生する。地域社会を少しずつ良くしていこうとする努力の積み重ねが働くということなのだろう。
 とはいえ、経済優先の効率主義、いってみれば儲け主義が先行する現代社会においては、そうした衝動はお腹の下の、さらに下の方に沈めておかないと、どうも塩梅がよくない。それでもなお、「本当にこんな働き方でいいの?」「何のために働いているの?」という内なる心の声を消すことは難しい。会社の仕事が終わった後に社会貢献活動をしたり、週末起業をして会社の外で仲間づくりをしたり、試行錯誤を始めている人が増えている。それは、心の渇きのようなものをなんとか潤そうとする試みではないだろうか。
 僕は「はたらく」ことを「傍を楽にすることを通じて、自分自身の価値を高めていくこと」だと捉えている。それを実現する組織が、僕にとっては二〇〇五年に独立して立ち上げた事務所studio-Lなのだ。有志四人の集まりからスタートし、コミュニティデザイン、つまり地域づくりのお手伝いをしてきた。この事務所に最近、大企業や官庁をわざわざ辞めて入ってくる人がいる。うまく続けられる人もいるし、途中で辞めてしまう人もいる。
 原因はいろいろあるだろう。コミュニティデザインの現場では、地域の「おっちゃん」や「おばちゃん」たちとやりとりすることが多い。これまでの仕事相手とは全然違う論理で動く人たちばかりだ。頭で考えながら仕事をしてきた人たちが、心を通わせる仕事に慣れるのには時間がかかる。自分のキャリアやノウハウが通用しないことも出てくる。加えて、メンバー各人が個人事業主であり、チームでもあるような僕たちの働き方そのものに慣れるのも難しい。自立した個人として能力を高めるよう求められる仕事でもあり、スタジオのメンバーや仲間と協力してプロジェクトを遂行することも求められる。その結果、大きな組織での働き方からこの特殊な働き方へと円滑に移行できない人が出てしまうようだ。(つづく/PROLOGUEより抜粋)