ハードワーク! グッドライフ!
新しい働き方に挑戦するための6つの対話


おわりに

 「ハードワーク! グッドライフ!」。本書のタイトルもまた、これまでの本と同じく編集者が提案してくれたものに従った。対談のなかで、駒崎さんは「ハードワーク・ハードライフでいきたい」と述べている。当然のことながら、この時の「ハードワーク」は、かつての「モーレツ社員」をイメージさせるものではない。ファッションブランドの「グローバルワーク」が出版する同名の雑誌の創刊号(二〇一一年)で、同誌の編集長に就任した水島ヒロさんと経営学者の米倉誠一郎さんが対談しているのだが、ここでも「今こそ、ハードワークを」がテーマになっている。最近、「ハードワーク」という言葉に新たな可能性を感じる人が増えつつあるのかもしれない。かく言う僕も、新しい輝きを持ちつつある「ハードワーク」という言葉に魅力を感じている。
 「グッドライフ」については、何度も言及してきたとおりである。ジョン・ラスキンや内村鑑三の言葉を出すまでもなく、僕はこれまで「善き人生」とは何かを考えながらコミュニティデザインの仕事に携わってきた。そして、「グッドライフ」を考えれば考えるほど、「ハードワーク」、つまり熱心に働くことについて考えるようになった。また、仲間とともに熱心に働くための仕組みを考えるようになった。朝日新聞の諸永裕司さんから連続対談の企画をもらった際、働き方というテーマを提案したのはこうした背景があったからだ。
 六人のハードワーカーとの対談は、全て品川駅近くにあるコクヨの「エコライブオフィス品川」で行われた。参加者は毎回六〇人程度で、大企業の社員から個人事業主まで様々だった。毎回のプログラムは以下のとおり。まずはゲストから生い立ちや活動内容や働き方について講演してもらう(四〇分間)。次に参加者が六人ずつのグループに分かれ、ゲストに投げかける質問について話し合う(二〇分間)。その後はグループからの質問にゲストが答えていく(六〇分間)。こうして二時間の対談を終えた後は、食事をしながらゲストと交流してもらう。毎回、楽しく刺激的な時間を過ごすことができた。
 一連の対談を文章化してくれたのはライターの古川雅子さん。その内容を再編集し、書籍化してくれたのは学芸出版社の井口夏実さん。装丁はUMAの原田祐馬さんが担当してくれた。井口さん、原田さんとは、もう何度も一緒に仕事をさせてもらった。二人とも善きハードワーカーである。
 六人六様の働き方からは、多くの刺激をいただいた。とても感謝している。伝統的な農村型コミュニティが成立しにくくなり、それをモデルとして生まれた大企業コミュニティも組織運営が困難になりつつある今、六人のゲストが示してくれた新しい組織運営が大企業コミュニティの運営にヒントを与えることになるかもしれないし、農村型コミュニティの運営に新たな風を吹き込むことになるかもしれない。六人からいただいた知見を無駄にすることなく、コミュニティデザインの現場で積極的に活用していきたい。
 本書が、あなたの働き方や生き方をいい方向に変えるきっかけになれば幸いである。それぞれの職種や価値観に応じて、新しい働き方が発明されることを楽しみにしている。本書を書き終えた今、僕はさらに詳しく「働き方」について調べてみたいと感じている。そして、機会があれば「新しい働き方」を実践されている方々を取材させてもらい、その内容を次の本にまとめてみたい。その時、取材先の本棚に本書を見つけることを夢見つつ、今回はこの辺で筆をおくことにする。

二〇一四年八月 山崎亮