100円商店街・バル・まちゼミ
お店が儲かるまちづくり

推薦の言葉

 商店街に風が吹いている。時代後れの代名詞のように言われ、「もう滅びる寸前」とまで言われる商店街に、暖かい風が吹いている。ハード整備をしても、色々なソフト事業に取り組んでも、イベントをしてみても、なかなか好転することはなかった商店街に、動きが出てきた。
 商店街に、なぜ最近になって風が吹き始めたのか。今までとはまったく発想の違う取り組みが現れたのだ。全員でやろうという考えは捨てる。熱く燃える人たちだけで取り組む。商店街という組織にはこだわらない。燃える人は、消費者・市民も一緒に参加する。まちに人を呼ぶことが目的ではない。店に入ってもらって、店を知ってもらい、店のファンになってもらう。客が喜び、店が喜び、まちが喜ぶ。まさに「三方よし」なのだ。それでいて、予算はそれほどかからない。行政の補助金などを当てにすることなく、自分たちの企画で継続してやっていける。そして何より、参加者たちがその取り組みを楽しむことができる。そんなことを目指した新しい取り組みが次々と考え出されてきた。
 本書では、その中から、「100円商店街」「バル」「まちゼミ」を取り上げて、全国でもトップレベルの実績を上げているキーマンが、その意気込みと秘訣を思う存分に語っている。これらの取り組みはすでにメディアで取り上げられることも多く、ほとんどの方が知っているはずだ。しかし、いざ、実際にやろうとすると、なかなかうまく事は運ばない。一見するところ簡単には見えるけれども、実は、この種の取り組みの奥はものすごく深い。大きな考え方や理念はもちろん大事である。しかし、真理は細部に宿る。細部の細かな工夫と目配り、その積み重ねがこれらの取り組みを成功に導く。本書の執筆者は惜しげもなく、実に丁寧にその細部の工夫を語っている。  はじめからあまり細かなことを意識していると何もできない。大きな方向だけ理解すれば、とにかく一歩踏み出すことだ、というのも真理である。しかし、そうしてとんでもないしっぺ返しにあってしまうことは少なくない。現場で考え、工夫しながら動かすとは言うのはその通りなのだが、先人の工夫に学びながら、取り組みの「ツボ」を理解することができれば、その方がはるかに素晴らしい。
 本書を読めば、やりようによってはまだいろんなことができるし、それが効果を発揮すると実感してもらえるのではないか。そうすれば、これまで何をすればいいのか分からずに立ち止まっていた人たちにも、きっと新しい一歩を踏み出してもらえるはずだ。悩み多き商店街の人びとにぜひ一読をお薦めしたいが、商店街を見守っているまちの人びと、商店街に寄り添いたいと思っているコンサルタントや研究者、学生の皆さんにも、きっと新たな視点を手に入れてもらえるはずである。

流通科学大学商学部特別教授 石原武政