100円商店街・バル・まちゼミ
お店が儲かるまちづくり

はじめに

 皆さんは、「100円商店街」「バル」「まちゼミ」という、商店街や中心市街地に立地する店の活性化の取り組みをご存じだろうか。たった100円で想像をはるかに超える集客力で賑わいを作る「100円商店街」、まちの複数の飲食店を巡り来街者とまちと店をつなげる「バル」、そして、ゼミナール方式で店のファンづくりをする「まちゼミ」。「100円商店街」は全国100ヶ所近い自治体で開催され、その圧倒的な集客力は右に出るものがいない。「バル」はまちなかの飲食店が面的に参加することにより回遊性の向上に大いに貢献している。「まちゼミ」は郊外の大型店のパート店員では持ち得ない商品知識と技術力で郊外との差別化を実現している。この三つの取り組みは、今や「商店街活性化の三種の神器」とも呼ばれる取り組みだが、すでに日本全国各地に伝播し、その勢いはいまだに止まらない。
 商店街や中心市街地の衰退が叫ばれて久しい。そこに店を構える店主からこんな声が聞こえてくる。「イベントにどれだけカネを注ぎ込んでも、自分たちの商店街には全く客が戻らない」「郊外の商業施設にはとても太刀打ちができない。万策が尽きてしまった」と。しかしよく見れば、イベントは商店街を取り巻く環境が激変しても相変わらず従来の延長線上のものが多かったし、郊外の商業施設と徹底的に差別化を図るようなチャレンジをしたかというと、そこまでの経営努力をした店は少なかったように思う。本当に万策は尽きたのか。私たちはやるべきことはすべてやり尽くしたのか。そんな状況の中で満を持して登場したのがこれら「三種の神器」だ。「三種の神器」は、いずれも商店街やそこにある店が直接来店者の増加を狙うもので、自らの生き残りの意欲を問う取り組みである。
 本書では「三種の神器」を創設あるいは普及した本人自身が、その想いから真髄までを赤裸々に語り、加えて「三種の神器」すべてを導入した二つの地域のキーマンが「三種の神器」に対する想いを語ることを通じて、これからの商店街や中心市街地、そこに立地する店の活性化について皆さんとともに学びたいと思う。我々まちづくりの6人の仲間が「三種の神器」に対する想いのすべてを書いたのが本書である。まちづくりに興味のある市民、学生、そしてまちなかの小売店や飲食店、そして商店街や中心市街地の活性化に携わる、できるだけ多くの皆さんにぜひとも読んでほしいと願っている。
 「三種の神器」は万能とは言わないが、現時点で商店街や中心市街地、そこに立地する店の生き残りにとって極めて有効な取り組みであると断言できる。「三種の神器」を実践することを通じて皆さんの地域が活性化し、更には「三種の神器」を超える新薬が生まれたならば、筆者一同これ以上の喜びはない。
 
 2012年 秋 著者を代表して

長坂泰之