地方都市圏の交通とまちづくり
持続可能な社会をめざして

おわりに

 筆者のもともとの研究分野は航空・空港に関連する政策分野であるが、和歌山大学に赴任して3年目の2003年秋に、その後の研究生活を左右し、本書執筆へとつながる大きな出来事があった。貴志川線存廃問題の発生である。同僚の河音琢朗先生を通じて貴志川線問題に関するシンポジウムへの登壇を打診され、これも勉強のうちだとお受けしたのが始まりであった。その後、沿線自治体主催のシンポジウムのコーディネートや、社会的費用便益分析の企画・実施といった活動に明け暮れるうちに、研究分野は交通政策全般へと拡がった。
 広島大学での学生時代から今日まで、戸田常一先生をはじめとする先生方にはご指導・ご鞭撻を頂戴し、改めて感謝を申し上げたい。ここ数年は、日本交通学会での活動に加えて、土木学会の「土木計画のための態度・行動変容研究小委員会」(藤井聡小委員長)、「生活交通サービス研究小委員会」(喜多秀行小委員長)および「交通まちづくり研究小委員会」(原田昇小委員長)の末席にも加えて頂き、これらの活動で得た知見を「和歌山都市圏交通まちづくり基本計画(素案)」策定プロジェクトや、近鉄伊賀線の再生に関する活動等に活かすことができた。伊賀線は伊賀鉄道として存続し、「伊賀鉄道地域公共交通総合連携計画」のもとで数々の活性化策が展開される予定である。地域公共交通総合連携計画は、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づくものであり、今後全国での活用が期待されている。
 和歌山、伊賀、橋本、田辺など各地で活躍されている市民、交通政策担当者、交通事業者の皆さんにも随分とお世話になった。厚く御礼申し上げる。
 本書の出版にあたっては、学芸出版社の前田裕資さんにお世話頂き、章の構成から内容全般に至るまで適切な助言を頂戴した。また、編集は同社の中木保代さんに担当して頂いた。本書は筆者にとって初の単著書であり、前田さんと中木さんには色々とお手数をお掛けした。研究室の西山明美さんには資料整理や図表の清書等で随分お世話になっている。記して深く感謝申し上げる。
 最後に、妻、母、テクニシャン、大学院生の4足もの草鞋を履きながら支えてくれた妻和子に改めて感謝する。

2009年3月 辻本 勝久