証言・町並み保存


あとがき

 本書は、「西村幸夫 町並み塾」におけるゲストの講演と西村先生によるインタビューを基本としている。「町並み塾」は、二〇〇四年に「全国町並みゼミ大聖寺大会」を石川県加賀市で開催する際に、地域にとって一過性のもので終わらせるのではなく、もっと町並み保存を勉強しようという西村先生の発案で始まった。それは、全国における町並み保存活動の草創期の方々の生の声を聞きだし記録にまとめ、町並み保存やまちづくりに対する考え方を学ぶこと、さらに、現在活動している人にとっては、先を照らす光となり、勇気をいただこうということでスタートしたものである。
  二〇〇四年にスタートした町並み塾は年四回で、二〇〇六年までに第一期として十二回開催した。現在は、第二期目に入っている。これまでの開催地は北陸の石川県加賀市、小松市、金沢市、福井県坂井市である。番外編で愛知県豊田市足助でも行った。塾は各都市において、NPOやまちづくり協議会等が主体となり、行政や商工会議所、観光協会等のサポートを得ながら開催してきた。今後も継続していきたいと考えており、この北陸での小さな取り組みが全国で活動されている方々に少しでも参考になれば望外の喜びである。
  町並み塾は、小樽の峯山冨美さんからスタートしたのであるが、小樽と開催地の加賀市大聖寺瀬越町は、北前船でしっかりと繋がっていた。小樽運河の大家倉庫の大家さんは加賀市出身であるし、町並み塾を開催した竹の浦館は元小学校の建物で、北前船船主の大家家と広海家の寄付により建てられたものである。まさに、町並み塾を介してまちづくりのえにしを感じた。
  このインタビューのエッセンスは、「季刊まちづくり」(学芸出版社)に二〇〇四年の五号から十三号にわたり掲載された。本書は、その際に誌面の都合で惜しみながら削った部分も含めて、再編集したものである。編集にあたり、できるだけ生の声を残すことと、読者の理解の手助けとなるように写真や資料を掲載した。
  本書の作成にあたり、町並み保存に対する熱い思いを語っていただいた八人のゲストに、まずは感謝を申し上げたい。また、塾の開催地である加賀市では、加賀市やかがPAP財団をはじめ、瀬戸達さん、金沢市では、坂本英之さん、遠藤新さん、本多義忠さん、小松市では、西正次さん、曽田孝志さん、坂井市では、玉森慶三さん、大和久米登さん、豊田市では、鱸雅守さんなど、多くの方々に支援していただいた。本書の小樽と函館の章では、柳田良造さんに協力していただいた。さらに、塾の開催と本書の編集を献身的にサポートしていただいた同僚の吉田真由美さんにも感謝を申し上げたい。最後に学芸出版社の前田裕資氏、クッド研究所の八甫谷邦明氏、小崎晶子氏に出版にあたりお世話になった。改めてお礼を申し上げたい。

  二〇〇七年七月
埒 正浩