証言・町並み保存

Contents

序 「町並み保存運動」由来記 西村幸夫

1 運河と共に生きる 
  まちは過去・現在・未来に生きる人たちの共同作品 峯山冨美(小樽)

年間八百万人を超える観光客が訪れる小樽。
運河沿いにホテルや観光客向けの店が軒を連ね、若者のはなやいだ声が響く。
しかし、二十年前、この小樽運河の存続を巡って、大きなドラマが展開されたことは、遠い記憶となりつつある。

2 歴史的建築物の再生がまちに生命を与える 村岡武司(函館)

異国情緒の漂う開港都市。
外国貿易と北洋漁業でかつて隆盛を極めた町で、その時々の若者たちによって建物が再生され、輝きを失っていた町にいのちを与えた。

3 歴史の厚みを積み重ね、歴史に寄り添ったまちづくりを 高橋雄七(角館)

みちのくの小京都といわれる秋田県、「角館」。
城下町の町割がそのまま残り、特に武家居住地は 「重要伝統的建造物群保存地区」の選定を受けている。この武家屋敷と桜で年間二二〇万人の観光客が訪れる。

4 「売らない」「貸さない」「こわさない」のむらづくり 小林俊彦(妻籠)

木曾の山の中にある中山道の宿場町、南木曾町妻籠。
高度経済成長の真っ只中、町並み保存という言葉がない時代に、木曾の自然を守り、庶民の生活を大切にするビジョンを持ち、住民を説得して歩いた男がいた。

5 本物にこだわる古くて新しいまちづくり 小澤庄一(足助)

過疎の山里で、三十年以上にわたり独創的な発想で古くて新しいまちづくりを牽引してきた男の活動は、仲間に支えられて、着実に実を結んできた。

6 足元の宝を見つめて暮らしをデザインする 松場登美(石見銀山)

世界遺産に登録された石見銀山のふもと『大森町』。
かつて銀の産出で賑わった町は過疎のどん底に。
しかし、過疎のまちから発信するメッセージが、今、豊かな感性を蘇らせてくれている。

7 引き算型のまちづくりと村並み保存 岡田文淑(内子)

歴史的町並みが残る愛媛県内子町。
地域の生き残りをかけて始めた活動は、町並み保存から村並み保存へと広がり、村の価値観を転換して、新たなまちづくりへと進化している。

8 島を美しく守るうつぐみの心 上勢頭芳徳(竹富島)

南海に浮かぶさんご礁の島。
十二年連続人口が増え続ける三二七人の島で、何が起こっているのか。

あとがき 埒 正浩