土木と景観


書 評
『環境緑化新聞』 2007.5.1
 景観法の制定で全国画一的に行われていた公共事業も見直しに迫られている。環境アセスメントを導入し、その土地の風土に根ざした景観づくりや固有の歴史、文化を見すえた景観づくりは住民の関心の高まりを受けて、今後全国各地で盛んになっていくことだろう。
 土木構造物は人々の生活を支える重要なインフラストラクチャーである。そうした地域資産に愛着や関心を持って暮らしていくことができるか否かで日々の生活も全く違ったものになってくる。デザインやマネジメントに関わる専門家の責務は重大だ。
 本書は著者らが昨年名古屋市で開催した「景観法時代におけるインフラストラクチャーのデザインとマネジメント」と題したシンポジウムから生まれた。専門分野からの個々のアプローチは土木の進むべき道を指し示している。
 「健康美人」ということばがあるが、「健康な地域の景観はやはり健康的で美しい」という著者のことばには説得力がある。健康な景観に囲まれて健康な生活を送りたいものだ。

『建築技術』(褐囃z技術)2007.7
 「美しい国づくり」が議論され、公共事業における景観アセスメントの本格導入を迎えた景観法時代のいま、日本全国の市町村、地域は、その土地の風土に根ざした景観、それぞれの土地に固有な歴史や文化を見つめ直す必要に迫られている。本書は、2006年3月のシンポジウム「景観法時代におけるインフラストラクチャーのデザインとマネジメント」を契機に、5名の執筆者が有機的に重なり合い、健全な地域づくりのための多元的なアプローチを提示する。構造物の建設だけでなく、地域の生活に密着したつくり方・使い方のマネジメントが求められる。今日の土木技術者が持つべき目標と役割を、交通・政策・防災・参加・歴史の視点から各研究者が論じた書である。