自治体都市計画の最前線


はじめに

 地方分権一括法の制定とそれに続く都市計画法や建築基準法等の土地利用関連法の改正による地方自治体への権限の委譲、地方自治体による主体的活用と運用を前提とした景観法の制定により、都市計画やまちづくりの分野で地方自治体による新しい試みが相次いでいる。
  また、無秩序な土地利用、市街地の外延的拡大、建築物の高層化、中心市街地の衰退化が進むとともに、地球温暖化対策、都市環境や景観保全と形成に対する市民からの要請、コンパクトシティへの政策転換、公共事業の見直し等、地方自治体に課せられた課題が多い中、これらの課題に対して積極的に対応する地方自治体の試みも増えてきている。
  一方、行政手続法の制定、行政事件訴訟法の改正等により、地方自治体の都市計画やまちづくりの分野は、常に合理性、公平性、透明性が問われる時代となっている。
  地方分権下では、都市計画やまちづくりの分野においても正解は一つではない。地域によって、行政や市民等が置かれている状況、まちづくりの主体の成熟度によって回答は異なる。そこで、地方自治体による新しいチャレンジを紹介し、そこから学ぶことが重要であると私たちは考えた。
  ここでは、できるだけ多分野にわたり多くの事例を集め、紹介することに専念した。地方自治体の職員、研究者、市民が、より深く事例に学びたい場合の案内になれば幸いである。
  なお、ここで取り上げた事例は一部である。今後、できるだけ定期的に新しい事例を紹介したい。また、単行本という性格からタイムリーに事例を紹介できない。あわせて学芸出版社が発行する『季刊まちづくり』誌を参照されたい。

編著者一同
平成19年1月